2018年を振り返る

今年も残すところ3日。特段目標を立てて過ごしているわけでもないので、一年を振り返って反省したりはしないし、だいたい「今年もなかなかいい年だったなあ」とぼんやりとらえて終わり。でも一応思い出してみようと思います。

1月
鹿児島子ども劇場&むすび座と韓国(ソウル)へ。
これは、鹿児島県高学年子ども芸術祭典の体験ツアー。ここから『トッケビ ~鬼ヶ島と呼ばれた島~』が生まれたのだが、この時点ではもちろんアイデアはなかった。というか、「トッケビ」すら知らなかった。日本のメディアは、連日北朝鮮のミサイルに関するニュースを流し国民の不安を煽っていたが、ソウルは日常そのものといった雰囲気で、この時感じたギャップが、「鬼ヶ島と呼ばれた島」という副題につながっていったのかも知れない。

2月
ジャッキーとの出会い。ベイビーミニシアター演出助手に。
TYAのアジアフェスティバルで上演されたジャッキーのベイビーミニシアター作品の演出助手を劇団仲間の大堀茜さんと二人でかわりばんこで務めた。ベイビーシアター作品に関わることが出来たことで、児童演劇のとらえた方が大きく変わったと思う。それまでは「作品と子どもたちとの出会い」と考えていたものが、「物語を介した演者と子どもたちとの出会い」に変わっていった。ジャッキーとの出会いはもちろんのこと、「この人は一体何を考えているんだろう…」と、目を離せない面白い人との出会いが沢山あった。

3月
『はれときどきぶた』(人形劇団ひとみ座)を発表。
2016年の12月から15ヶ月間少しずつ少しずつ作ってきた作品をベストを尽くして発表できた。この一年は『はれぶた』を発表できたことだけでももう大満足。作品を作ることがこんなに楽しく幸せなことであることを製作に携わったみんなとシェアしながら進んでいくことが出来たことが本当に嬉しい。企画というのは最初に理想を語り合って風呂敷を広げる時が一番楽しいものだが、作品作りが具体的に進んでいってもこの楽しさが減退することはなく、むしろどんどん広がり、そしてある時期から深まっていった。今はこの深さが一体どこまであるのか本番と稽古場を往復することで探索している。

4月・5月
『トッケビ』執筆・推敲・脱稿。
図書館に通いながら『トッケビ』を執筆。資料に飲み込まれそうになったところを演出の大野さんに何度も引き上げてもらった。一稿を上げて鹿児島に行った時、よほど精気を失っていたのか、鹿児島子ども劇場の方々に体調を心配され「桜島を見て元気をだして下さい」と言われた。本当は、つっこみどころ満載の一稿に言いたいことは山ほどあっただろうに、一言「桜島を見ろ」と言ってあとは信じて待ってくれる懐の深さに奮い立った。大野さんはじめむすび座の方々もなかなか書き進められないボクを信じて待ってくれた。信じて待ってもらえると力が出てくる。沢山の人に支えられて6月初めになんとか納得のいく形で脚本を脱稿することが出来た。

6月
関野吉晴さんの公開講座に参加。
『トッケビ』を書き終えて余裕が出たのでグレートジャーニーの探検家関野吉晴さんが武蔵野美術大学で行っている講演や公開対談に通い始める。昨年ある方が教えてくれた公開講座だがこれが本当に面白く、人類のたどった足跡や今なお狩猟採集生活を送っている人々の話を伺うことは「演劇とは何か」「児童演劇とは何か」「子どもとは何か」を考える糸口となっている。

7月
西日本豪雨災害があって一時帰郷。
地元ということもあって数日間帰郷して泥だしのボランティアに参加する。被害が大きかったのは実家から10キロほど離れた、みかん農家を営まれている方々が多く暮らす集落だった。そこには地域のコミュニティがしっかりと機能していて、ボクと同じ世代の若者達が頼もしく現場を切り盛りしていた。「気張ってもしようがない。少しずつみんなでやろうや。」という緩やかな雰囲気があり手伝いに行ったこちらの方がかえって元気をもらう形となった。

8月
「ふじのくに子ども芸術大学」で教鞭を取る!?
「ふじのくに子ども芸術大学」は沢山のイベントがあるのですが、その中で静岡県子ども劇場おやこ劇場連絡会が主催した「脚本を作って演じてみよう」という特別講座に講師として呼んでいただきました。小中学生12名とキャラ作りから即興劇作り&発表まで。静岡・清水・富士の劇場のみなさんにもサポートだけじゃなく本番の語り手や楽士としてどんどん参加してもらいみんなで盛り上がりました。作品づくりもそうだけど、こういう講座も「フタを開けてみないとどうなるか分かんない」ってみんなでドキドキすることが一番大事だなあと確信した日。打ち上げのビールが旨かった!

9月
児演協しばいの大学で「戯曲研究講座」を担当。
今年もしばいの大学スタート。でも今年はプロを目指す人だけでなく、児童演劇や子どもに関わるすべての人が参加可能な市民講座的な色合い強し。それなら授業の内容も考え直しましょうとボクの講座では、3回に分けて「舞台の戯曲とは」「人形劇の戯曲とは」「児童演劇の戯曲とは」について考えてみました。9月から11月まで月一の授業で、合計42名の参加をいただきました。

10月
『夢応の鯉魚』製作開始!
カフェ芝居の脚本・演出のお話をいただき準備を開始しました。題材は江戸時代に書かれた『雨月物語』の中の一遍。俳優と琵琶奏者の二人芝居。併せて演じられるのは超硬派な語り芝居『山月記』etc.これらの条件の中で自分の担当する作品の位置づけを考えるのが楽しかった。「演出ってプロデュースだな」と思い始めた時期。

11月
『トッケビ』が鹿児島子ども芸術祭典を回る!
6月に脚本を渡した『トッケビ』が夏の試演会を得てさらに稽古を積んでいざ鹿児島へ。約一ヶ月間鹿児島県内23カ所で上演されました。ボクは初日と千秋楽を拝見。最後の大合評会は、大盛り上がり。歴史を題材にした作品ということで観客が受け身になっていないか、という心配があったが観客はもっともっと能動的に、作品を自分に引き寄せて観ていた。感想の中には、敵対者として描いた人物のその後の人生の転機まで語ってくれたものがあり、それを聞いてみんなで大笑い。この時の笑い声を5月のボクに聞かせてやりたいと思った。

12月
『夢応の鯉魚』本番!
わずか2ステージの本番だったが発見の多い仕事だった。劇場でない場所で上演することで劇場という建物自体が持つ約束事を改めて考えさせてもらった。つまり演劇を本当の意味で演劇たらしめているのは、劇場という建物ではなく、舞台装置でもなく、照明や音響でもないこと。演劇を作っているのは俳優と観客である。この大前提をとらえ直してこれからどんな作品をつくっていくか。7月の経験がボクに「演劇をコミュニティの一環として再定義しろ」と言っているような気がする。来年はそのことに正面から向かう企画を考えます。目標じゃない。今気になることを一つずつ楽しんでやっていこう。

この他にも、2月に子ども劇場おやこ劇場東海連絡会で講演をさせてもらい、その時に「私たちはもうリーダーは要りません」という衝撃的な言葉を聞いてその言葉が今も頭の中をぐるぐる回っている。いつから人間はリーダーを作ったか。その事と貧富の起こりや戦争はどう関係してくるか。そしてリーダーを作ったことで人の集まり方はどう変わってきたのか。それは演劇にどういう影響をもたらしたか。劇場は基本的に舞台と客席が向かい合う形となっているが、それは本当に人間にとって自然な人の集まり方なのか。子どもの感覚に合っているのか。話はいつも大きくなるが、作品づくりのなかでは常に具体的な選択を一つずつこなしていくだけだ。逆にいうと、具体的な選択の中に根本的な問いかけを持つ事が自分の仕事だと思う。
2018年もいい年だった。みなさん、良いお年をお迎え下さい。

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