(文字数オーバーで)お蔵入りした『おしいれのぼうけん』当日パンフ用 松本美里×西上寛樹 対談原稿を勿体ないのでブログで公開します!

ブログを長く休んでいる間に新作 松本美里の一人芝居『おしいれのぼうけん』(原作 古田足日・田畑精一 童心社/人形劇団ひとみ座作品 )が幕開けしました。劇場でお配りする当日パンフレット用に美里さんと本番前に対談をしたのですが、既定の文字数にどうしても収まらず結局お蔵入りに。勿体ないのでブログで公開します!

松本美里 額縁屋さんの人形劇『おしいれのぼうけん』

なぜ『おしいれのぼうけん』?

西上     作品を決めたのは美里さんです。なんでこの作品にしたの?

美里       この作品とは3回の出会いがあって1回目は幼稚園の時。幼稚園で読んでもらって怖かった。でもそれはすっかり忘れてて2回目は18歳。保育実習で保育園に行った時。先生が年長さん相手にお昼寝の時間素話でやってて、子ども達は布団に入ったり友達とくっついたりしながら聞いてた。その時自分も昔読んでもらったことを思い出して。素話だけど映像が自分の頭の中で広がってめちゃくちゃ怖かった。絵本が一番面白いと思ってたけど想像する方がもっと怖いと思った。
3回目は姪っ子。寝ない日にお姉ちゃんが「ねずみ婆さん来るよ」って言ったらすごい勢いで布団に入ってた。作品に時代を超えた力がある。元々怖い話は好きだったから劇にしたら面白いんじゃないかと思って。

西上       俺はこの作品に取りかかることが決まってから読んだんだけど、「怖い」ってことが面白いと思った。今の時代は子どもから怖いものを遠ざけようとしてるから。

美里       大学で発達心理学を勉強してるときにレポートでそれについて書いたの。例えばお皿を割らないようにプラスチック製のものに変えたりすると「落としたら割れる」という体験を逃すことになる。それと同じで、怖いということを絵本や遊びを通して経験していくのはすごく大事なんだってこと。

西上       怖いということで思い出すのはナマハゲ。あれは怖がらせることで子どもを教育してるわけだけど、俺が『おしいれのぼうけん』を通して考えたいことはそれとはまた違って、怖さと想像力の関係について。大昔、ヒトが夜の闇に潜む肉食獣の危険を察知する必要が出てきた時に恐怖と想像力が表裏一体となって生まれてきたと言われている。俺たちは想像力に関係する仕事をしてるけど、例えば人形の表情は変わらないのに子ども達は想像力で人形の表情を補っていく。
だからもし、ねずみ婆さんの人形はそんなに動いていないのに「怖い!」ってことになったら、それは子どもたちの想像力がものすごく働いていることになる。怖いものをタブー視するってことは、そういう人間が本来持ってる想像力も規制してる気がして、今の時代にそういう作品が無いなら「俺らが作っちゃおう」って。

『おしいれのぼうけん』は、怖い人形劇だ

額縁プランについて

西上  ちなみに、今回は額縁屋ということで劇が進んでいきますけど、これはなんですか?

美里       額縁が好きだからです。

西上       そうなんですよ。最初俺は押し入れを知らない子ども達に押し入れを体験してもらうところからスタートしようと思って、押し入れで遊んでもらった後、押し入れ自体を舞台にして人形劇をするプランを作った。そしたら美里さんが「ダサいから嫌だ」って。(笑)なので「じゃあ好きな物は何?」って聞いた。一人芝居だから美里さんのカラーが出てくるのが一番だと思って。その経緯で額縁屋案が出て来た。今は好きな額縁に囲まれてどうですか?

美里       飾るたびにいいなあと思うけど、増やしたくなってくるよね。もっと可愛いの欲しいなって。

大好きな額縁に囲まれて幸せそうな美里さん
劇中使用する額縁には、額縁額装専門店 アトモスフィア(西荻窪)さんの協力を得て、この作品のために生まれた額縁も登場します

西上       ちょっと専門的なことになるけど、現代人形劇もプロセニアムという額縁を使ったヨーロッパ近代劇の系譜にいるわけで、今までもそれは使ってきたわけだよね。でも本物の額縁を使ったことはなかった。

美里       前、西上さんがある人に「型を破って作品を作ろうとしている人があえて型に自分をはめこもうとしてるのが面白い」って言われてたのが本当にそうだと思って、『はれときどきぶた』とかは、プロセニアムを全部壊していきたいっていうので生まれたから。

『はれときどきぶた』(人形劇団ひとみ座)

西上       結局前と違うことをしたいんだよね。そうじゃないと新しい作品を作っていく自信がない。俺はね。

美里       自分に負けた気がする。(笑)

西上       額縁スタイルだって実は一人芝居を成立させるためのアイデアから出てきてる。今回人形から手を離してるわけだもんね。置いてるんだから。

美里       人形を飾る時に額縁があれば絵が決まるってことを発見した時に「あ、いける」って。

西上       そうだね。人形遣いとしてはものすごい挑戦なわけだよね。全編じゃないけどパペットからドールに持ち替えた。手を離しちゃう。で、その手を離してる間は子ども達の想像の時間なんだ。それと怖い時に発動する想像力が繋がってくれば一人芝居でしか出来ないものが生まれるんじゃないかって。

今回大きな挑戦となった置き人形スタイル

美里       それが一番大事。3人でやった方が面白かったって言われたら今回の挑戦は失敗。

西上       一人だからできること。

美里       だからお客さんの想像力を全力で借りて最後まで一緒に冒険をするっていうか、それができるかどうか、ですね。

西上       うん。これはやっぱり舞台作品にしか出来ない。子ども達の想像力をそこまで借りてくるには、子ども達がそこにいてくれないと。

美里       まだ子どもと出会ってないから分からないけどね。

西上       どうなるだろうね。

一人芝居だけどチーム戦

西上  あと一人芝居のことでいうと、一般的な人形劇の世界の一人芝居の作り方とだいぶ違うよね。スケールも違うけど、多くの人は演じることも脚本も演出も美術も全部一人でやるからアプローチも違う。なぜそうしなかったの?

美里       出来ないから一人では。全部自分で出来る人もいるけど私は違う。自分はプレイヤーとして全力を尽くすことは出来るけど他は苦手。だから同期のモリシ(森下勝史)、美術のトーコ(本川東洋子)はじめ、信頼できる人たちにそれぞれ自分の得意なところで集まってもらった。ひとみ座はそういうことが出来るから。

西上       音楽の庄子(智一)さんにもすごく助けてもらってる。このメンバーじゃないと出来ない作品づくりがまた出来てる。これってすごく大事なことだよね。

美里       実は『はれときどきぶた』とほとんど同じチームです。

西上       うん。今回もチーム戦だね。

2021年12月8日 元住吉駅前カフェにて

以上がお蔵入りした文章でした。文章も作品と同じく人に読んでもらってはじめて意味を持ちます。最後までご覧いただきましてありがとうございました!!
『おしいれのぼうけん』は、おかげさまで初演の全日程を無事終了し、これからは、日本全国の子ども達に届けるために動き出します。今後ともよろしくお願いいたします!
上演の依頼は人形劇団ひとみ座まで。

『おしいれのぼうけん』創作チーム

出演  松本美里

脚本・演出  西上寛樹

美術  本川東洋子

音楽 庄子智一

装置・舞台監督・音響 森下勝史

照明 石川哲次

美術進行 小倉悦子

人形操演アドバイス 中村孝男

制作 甲斐勝行・来住野正雄

                     協力  額縁額装専門店 アトモスフィア

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