トイレ、水ときてついに電気編。オフグリッド生活というとまず電気のことをよく聞かれますが、生活してる実感としては「電気はなくてもなんとかなる」ので優先度的に伊佐日記シリーズ3番目の記事になりました。本当はこの次に書こうと思っている「火編」の方が生活の優先度としては高いのですが、気分的にこちらの記事の方が先に書きたくなったのでその辺はテゲテゲに。
目次
はじめに
もし、太陽光発電に興味があってこの記事に辿り着いた方は、この先を読み進めるより先にこの本を書いたテンダーさんのサイトに飛ぶことをお勧めします。
副題にあるようにこの本は子ども向けに書かれた本です。
言葉遣いも挿絵もとても親しみやすく、分かりやすく、そして深い、です。
リンク先で本の一部を確認できますのでぜひご覧ください。税別1,800円。
知識経験ゼロのボクがお手製太陽光発電でまがりなりにも生活できているのは、この本のおかげです。これからボクは自家製太陽光発電の製作風景を綴りますが、知識は全てこの本から得ています。そして見様見真似で、分からないところは「こんな感じかな」とテキトーにやっています。
それでも出来ちゃうのが太陽光発電。
小学校の時から理科の実験に興味ゼロ。中学の技術の時間ではハンダ付けも本棚作りも完成せず先生にやってもらっていたボクに出来たのですから、おそらく誰でも出来ます。
でも一つだけご注意を。作業はいたって簡単ですが、電気を作るのですから危険がゼロとは言い切れません。ですから「誰にでも出来る」という表現には、
(何が起きても人のせいにしない人なら)
という( )書きが入ることをお断りさせていただきます。
ただ怖がることはありません。危険な箇所は、テンダーさんが詳しく本の中で説明してくれていますからね。
ちなみに、かかった費用の総額は工具類も含めて4万円程度。
これを高いと捉えるか、安いと捉えるかは最後に考察します。
では早速見ていきましょう!
揃えたもの
色々買いましたが、太陽光から電気を作って発電するのに重要なのは、
の4つです。
あと、実用するために以下の2つを購入しています。
5.MC4コネクタ付き延長ケーブル(2,150円)
6.VCTFケーブル2芯1.25sq(306円/3m)
値段とAmazonのリンクは、2021年7月18日記事執筆時点のものです。買った時も大体こんなものでしたが、この記事をご覧になっていただいている時も同じように販売されているかは分かりません。
あとは工具です。
ですから工具を持ってる人からすれば、3万円ちょっとで出来るよ、ということですね。……なんだかお金の話ばっかり。でもそれは大事なこと。
仕組み
仕組みというか太陽光から電気を生み出すざっくりした流れは以下になります。
ソーラーパネルで太陽光を電気に変えてチャージコントローラー経由でバッテリーに蓄電。そこから再びチャージコントローラーを経由してシガーソケットのUSB端子で使用する。
※チャージコントローラーを間に挟んでいるのは、バッテリーの過充電過放電を避けるためです。
↑これ重要。バッテリーは過充電過放電でダメになってしまうのでチャージコントローラーに管理してもらいましょう。
製作風景
それでは早速作業に取り掛かりましょう。
とまあ、こんな感じ。あとはただ買ってきたものを繋ぐだけです。
作業自体はオロオロしながらやっても2時間程度。分かってる人がテキパキやれば20分かからないでしょう。つまり、簡単です!
そして電気が点いた!
電気が点きました。ご覧のように、電球とスマホとパソコンがこのシステムで動いています。
シガーソケットには最初からUSB type Aの端子がついていますが、ボクのPC(MacBook Pro2017)は、USB type Cで給電するモデル。そういう場合はシガーソケットにこういうものを差し込みます。
これでUSB type Cの充電も出来ます。
我が家の太陽光発電が完成したのが2021年4月24日。そしてこの記事を書いているのは7月18日です。
約三ヶ月間、我が家の電気はこのソーラーパネル一枚でまかなっています。今年は鹿児島の梅雨入りが5月11日と早く、それからしばらくは雨の日が続きました。確か連続で11日間ほど降っていたと思います。ご存知のようにソーラーパネルは雨の日はほとんど発電しません。それでも電気は無くなりませんでしたね。結構生活出来てます。ただし……
じゃあ、みんなこのソーラーパネル一枚で生活出来る? と聞かれたら答えはNO! です。
というのは、「何をもって生活出来ているのか」という基準が今のウチと一般家庭とではおそらくかなり乖離してしまっているからです。
というわけでここからはウチのわがや電力で出来ていることと出来ていないことをお伝えしていきます。
わがや電力で使っている家電、使っていない家電
まず我が家で「使っている家電」は以下となります。
少なっ! あとこの写真を撮ったカメラも使ってますね。
反対に使っていないものは……
冷蔵庫、炊飯ジャー、電子レンジ、エアコン、ドライヤー、大型テレビ、他に100Vの照明器具。
はい。ほとんどの電化製品を使えていませんね。
というより、2口プラグが点いている製品はほとんど使用していないのです。
この2口のプラグの電化製品は電圧が100Vのものなんですね。一般家庭の電圧は基本的に100V。交流の電気です。
しかし、『わがや電力』で作った電気は12V。直流の電気なのです。
ですから、2口プラグの製品を使うには、12Vの直流→100Vの交流に変換してから使用しなければなりません。それを可能にするのがこの機械です。
こういう製品は、ホームセンターの車用品のコーナーに行けば売っています。車内の電気も12Vだったんですね。というより、このみじかな12Vの車用バッテリーに目をつけて発電システムを構築したのがテンダーさんの『わがや電力』なんですね。先ほど写っていたバッテリーは実は船やバスに使うタイプのバッテリーなのです。
話を戻すとこの変換機は、疑似正弦波インバーターというもので、直流電気を交流に変換してくれるものです。先の写真に載せた我が家の掃除機やバリカンはこれを使用して使用しています。
ただし、定格出力が85Wなのでドライヤーなどの消費電力が1000Wを超えるものは使用できません。冷蔵庫やエアコンの使用もその理由で厳しいわけです。また、デスクトップPCを使うのも厳しいと思います。疑似正弦波インバーターは電気の波がカクカクして安定しないので精密機器を動かすのに向いていないからです。
DIY用に購入したインパクトドライバーもこのシステムでは充電できませんでした。
それなら大容量の正弦波インバーターを導入する、という選択肢もあります。
これなら電力的にドライヤーも動かせそうですし、繊細なバッテリー充電もこなしてくれそうです。
しかし、そもそもウチのソーラーパネル一枚で生み出せる電力はたかが知れていますので、こんなものを使ったらあっという間に電気が底をついてしまうと思いますし、こういう製品は高価で場所も取ります。見た目もいかつく好みでありません。
という理由で、今のところは先ほどの電化製品だけを使って生きているのです。
こう書くと、12Vの『わがや電力』が貧弱でかつ不安定な印象を与えてしまいますのでちょっとフォローさせてください。
12Vの強み
まず、スマホとパソコンの充電は全く問題ありません。両者はものすごく繊細な電気を必要としますが、12Vの直流電気は繊細な仕事が得意なんですね。先ほど苦手と言ったのは、間に「疑似正弦波インバーター」を使用した場合のことです。我が家では、iPhoneの充電もMacBook Proの充電もそれぞれUSBから直接充電していますので電力、安定性ともに全く問題ありません。
むしろ100Vの交流電気の方が実は繊細な作業に向いておらず、スマホやPCの充電には実は100Vも必要としていないので、普段みなさんはこういうものを使っていると思います。
わざわざなんでアダプタをかますのだろう。と思っていた方もいらっしゃったと思います。これはこれらの製品が実は100Vも電圧を必要としていないために電圧を下げる役割があるのと、安定した電気を供給するために必要だったんですね。
『わがや電力』の場合は、こういうアダプタを使用せず直接USBケーブルから充電できます。というわけでアダプタをガチャガチャする必要がなくなります。
もう一つ12Vの直流には大きな魅力があります。それは、
電磁波が出ない!
ということです。家庭用の100Vの交流は、電気の振動があるそうです。振動は50Hzの地域で1秒間に50回、60Hzの地域で1秒間に60回しているとのこと。この振動こそが電磁波の正体です。(偉そうに言い切ってしまいましたが全部『わがや電力』の受け売りです)
電磁波を浴びると、個人差がありますが頭が痛くなったり疲れやすくなったりするそうです。
対して12Vの直流は振動がないので電磁波が出ません。体感的な差はボクには正直よくわかりませんが12Vの方が体に優しいのは間違いなさそうです。
はい、12Vのフォローはここで終わり。
いくら体に優しくても12Vの電気が100Vにパワーの面で圧倒的に劣っていることに変わりはありません。このパワーの無さをどう凌いでいるのか、ここからはよくいただく質問からQ&A形式でお答えします。
よくいただく質問
Q1、ご飯はどうしてるの?
A、火で炊きます。
Q2、冷蔵庫は?
A、Aコープがウチの冷蔵庫です。
Q3、夜はどうするの?
A、夜は寝ます。
Q4、日が暮れてからの明かりは?
A、オイルランタン、電池式LEDランタン、電池式ヘッドライト。USB電球。
Q5、髪はどうやって乾かすの?
A、妻は温泉の電源でドライヤーを使っています。ボクはボウズなので必要ありません。
Q6、夏めちゃくちゃ暑いよ?
A、朝晩涼しいならなんとかなるんじゃないかなあ……。
Q7、冬は? マイナス16度になったこともあるんだよ?
A、薪ストーブ入れます!
とまあ半分『北の国から』の五郎さんが入っていますが、別にふざけているわけではなく本当にそんな生活なのです。
総額4万円は高いか?
ではここでわがや電力のコスパについて考えてみます。
ウチは4月から電気代がゼロになりましたが、初期投資費用には4万円かかっています。
これが高いか安いかを考えるにはこのシステムが何年間使えるか、ということが問題ですね。で、どうやらそれはそんなに長くないらしいのです。ディープサイクルバッテリーの平均寿命は2年だそうで、2年後にはまたバッテリーを買い換える必要があります。仮に2回買い替えて6年間使ったとしたら、
4万円+1万3千円×2=6万6千円。
6年間でこれだけの費用がかかるのです。1年で1万1千円。月1,000円弱という計算ですね。
電気代が月1,000円なんて安い!
と思われるかも知れませんが、そもそも今の状態では、ほとんど電気を使っていないので仮にここで使った電力を九州電力から購入しようと思ったら、おそらく最低の10A契約で事足りますから、基本料金が月297円。あとは一ヶ月でどれだけの電気を使うかですが、1,000円を切る可能性は十分にあります。
その場合設備投資費用はほとんどゼロですから『わがや電力』の方が安い、という可能性はかなり低いと思います。しかもAコープを我が家の冷蔵庫と見立てて、毎日必要なものを買いに行っている現在の生活では、実は電気代が食費の方に食い込んでいる、とも言えますし、洗濯をコインランドリーで済ませているのでそちらでも費用がかさんでいます。経済的には決してエコとは言えないんですね。
また、環境的にエコかどうか、ということも正直怪しいです。確かにウチの電気エネルギーは太陽からいただいているので一見環境に優しいように見えます。しかし、食材を毎日買いに行くのに自動車を使いますし、DIYと薪を作るために購入した電気式丸のこは発電機のガソリンエネルギーで動いています。草刈り機もチェンソーも混合油を使います。石油化石燃料に頼りきって生活が成り立っているのです。
でもボクはこの生活をもう少し続けてみようと思います。
それは何より楽しいからです。
自分が今何からエネルギーを受けてそのパワーを持ちえているか、ということを自覚できることが楽しいのです。自然が織りなすダイナミックな1日の変化に抗うことなく、自分自身を変化させることで順応していくことも気持ちがいいのです。
でも辛くなったらすぐに辞めます。妻も時々人に不満を漏らしているようです。その度に「ちょっと西上さん、美里さんのこともちゃんと考えないと」と言われます。ええ。本当にやばくなったらやめますとも。でも2拠点生活を始めた美里さんはこの間「電気のある生活は神奈川県で出来るからこっちはこれでいいかも」と言っていました。おお、では保存食方面の開拓を頼む!
そしたらオレは次にテンダーさんの提唱する「マジ電力」に挑戦してみるぞ。ソーラーパネルをあと2枚、バッテリーを2つ増やして24Vシステムを構築するのじゃ。そしたら1日3時間だけ動く冷凍庫を冷蔵庫代わりに使えるようになるみたいだぞ。このハイブリッド戦略で我が家の台所を強化しよう。
これが今現在の我が家の環境問題です。
少しはこの地球を生きていくための本免許に近づいたかな。
以下は追記(2021年7月20日)です。
購入した工具類
テンダーさんの『わがや電力』を参考に太陽光発電に挑戦される方のために、ボクが購入した工具類のリンクを貼っておきます。ただ、ボクはAmazonで購入する、というラクをしてしまいましたが、これも今後は考えていかなきゃいけないなと思っております。不自然なほど巨大なお金と物の流れに加担してしまっていることになるわけですからね。でもまあ、段階的に……。