再録:ボクが南アフリカで初めて観たベイビーシアター作品について

こちらの記事は、2017年の記事からの再録です。
最近、ベイビーシアターについて語ることが増えてきました。その時によく引用するのが2017年に南アフリカで行われた児童演劇の世界フェスティバルで観たダリアの作品のことです。ブログにはアップしていなかったので再掲載しておきます。

今日は夜21時から23時までアジアンパーティーが開かれました。
日本・韓国・インドがそれぞれ自国のお酒やつまみを持ち寄り、世界の人々を歓待し、交流の場を提供します。
韓国はアリランの披露、インドはダンスタイム、日本はコマや竹とんぼ、炭坑節のパフォーマンスで大盛り上がり。でもそちらのくわしい報告は、他の方々がたくさんしていると思うのでそちらにお任せして・・・僕は、セルビア人のダリアさん(現在はスウェーデンで活動中とのこと)によるベイビードラマについて報告します。※今回は特に長いので情報をベイビードラマの新情報を取得されたい方は、「匂い」「暗さ」の記述位までで良いと思います。それ以降は主観の強い文章になります。

作品

「sensescapes」(セルビア・スウェーデン)
対象年齢・・・月齢3ヶ月から18ヶ月。
演者は3人。女性2人と男性1人。
上演時間60分(演者のパフォーマンス自体は40分。しかしその後も空間は提供され続けているのでそこから20分位は、赤ちゃんの反応のままに大人もいっしょにたゆたっていた)
舞台については、写真を見て下さい。上演後のもので赤ちゃんもいないですが、広さと特徴は大体分かるかと。天井からぶら下がっているこんがらがった網の目が特徴で、これが演者によって上下し、赤ちゃんが触れるくらいまで低くなります。※パンフレット写真参照。

初めてのベイビードラマ

※2019年現在このジャンルのパフォーマンスは「ベイビーシアター」と呼ばれています

実は、僕はベイビードラマを観るのは初めてです。
日本でもこの数年盛り上がっている分野ですが、あまり興味が無く、はっきりいうと「赤ちゃんは芝居観なくていいんじゃない?」と、思っていました。
ええっと・・・今日からその考えを180度改めることにいたします。赤ちゃんもベイビードラマを観るべきです!・・・いや、ちょっと違うな。僕の持った感想は、「大人はみんなベイビードラマを観ている赤ちゃんを見るべきです!」。こっちですね。60分間のうち、僕が演者を観ていたのは、5分位。残り55分はずっと赤ちゃんを見ていました。それが自然な反応ですし、きっとそれでいいんだと思います。ベイビードラマは赤ちゃんのためのものというより、むしろ大人のためのものというのが僕の感想。
「親のためのもの」と書かずに「大人ためのもの」と書いたことが大事な所ですが、僕の観劇体験だけを書いてもベイビードラマをすでに専攻されている方達には面白くないと思いますので、まずは今回ダリアさんが挑戦された新しい試みを紹介していきましょう。

・匂い
舞台には匂いがあります。アロマディフューザーと言うんですか。ミスト状にアロマのいい香りがほのかに部屋を包みこむという演出がされていました。ベイビードラマに匂いが導入されたのは、これが初めてとのこと(太田昭さん談)。

・暗さ
思ったよりずっと暗い空間でした。※写真は終了後の明かりなので参考にしないで下さい。
照明機材は、LEDが用いられ、赤系・青系など、僕の勝手にイメージしていたベイビードラマより遙かに「暗く・強い色味」の照明設計がなされていました。これも太田さん曰く「初めてのこと」。自分のほっぺがオレンジ色の明かりで照らされても、赤ちゃんは始終リラックスしていました。

以下は、特別新しい試みでは無いかも知れません。

・衣装
人づてに聞いた話で、ベイビードラマはとにかく赤ちゃん達にリラックスしてもらうために演者の衣装はもちろん、観客の服装にも注意が入ると聞いていました。赤ちゃんをリラックスさせる色は「白」。なんだか、こういう話も僕がベイビードラマから足を遠ざける要因になっていたのですが、昨日の芝居では、特にそういう注意は入らなかったことはおろか、演者も特別な衣装を着ていたりはしなかったですね。(ねずみ色のTシャツとズボン。既成の服)

・音
音楽はメロディアスなものでは無く、リラクゼレーション系のCDにありそうな雰囲気音に近く、そこに時々へんてこな効果音が入っていた印象。面白いのは音源。一つは天井からぶら下がっている小さなスピーカー。もう一つは無造作に床に置かれたへんてこな袋の中に隠されたスピーカー。どちらも「音がそこから出ている」と、気づくのに時間がかかりました。「包み込むような音作り」がされているので、音源を見つけるのが難しいのです。

空間の提供

匂いと音作り、そして舞台の形からも分かるように、この作品は「パフォーマンス」が提供されているのではなく、「空間」が提供されています。
3人の演者は、赤ちゃんの回りを行き来して、踊ったり、大きな袋の中に入ってへんてこな動きをしたり、その袋に空いた小さな穴からこれまたへんてこなものをにょきにょき伸ばしたりしますが、赤ちゃんに直接触れたり、モノを使って興味を引くためにちらつかせたりするようなことはありません。一般的な舞台はパフォーマーと観客が「向かい合う事」で成立しますが、ベイビードラマは一つの空間のなかで「溶け合う事」で成立する感じです。成立するとどうなるか、赤ちゃんがおもむろに動き出すのです。興味の赴くままにハイハイして対象に近づき、手を出す。いや、それよりもまず対象を見る。対象とは、パフォーマーや天井にあるふわふわの網のことだけではありません。周りにいる僕たちです。僕たちの目です。始まってどれ位の時間が立ってからでしょう。赤ちゃんがお父さんのそばを離れて周りにいる僕たちと目を合わせるようになったのは。
赤ちゃんに見つめられると不思議な気持ちになります。まず嬉しい。そして時間を忘れる。
大人の場合「目が合う」という状態は危うい行為です。町中で知らない人と目が合ったら日本人は、目をそらします。反対にこちらの人は、笑顔を返します。文化の違いで反応こそ違いますが、共通している事は「目の合った状態を終了させる事」です。そこからさらにじっと見ていたら大変。ケンカを売っているのか、誘っているのかという話になります。でも赤ちゃんが相手なら話は別。赤ちゃんには自我のバリアが無いので目が合っても平気なんですね。赤ちゃんの無垢な目線は、自我というバリアを張った僕の思考を通り越し、僕の存在そのものを見つめてきているような力があります。「目が合う」というより「つながる」という感じ。
電車に乗ってたりすると赤ちゃんと目が合いますよね。でも電車だと、こちらが「ばあ!」と、おどけることで「赤ちゃんをあやす自分」という形に状態を相対化してしまったり、「何ヶ月ですか?」と親に話しかけて、「存在と存在」の絶対的な関係を結ぼうとしている赤ちゃんの信号を逸らしてしまいがちです。でもここベイビースペースはそれが出来るんですね。パフォーマーがきっとあらゆる工夫をしてこの空間を提供してくれているからです。
「赤ちゃんってこんな感じで世界を見てるのかなあ?」
そう感じた時、僕は自分が普段とは違う時間の流れの中にいることを知りました。

時間からの解放

「赤ちゃん相手に60分は長い」と思う方沢山いると思うんです。でもそういうことは今日の作品を観る分には関係ない。「つながった」状態に「時間」という線引き自体が無意味だからです。
1分は1分。時間は不動のもの。
たぶん多くの人は、そう思っていると思うんです。でもそれは別に決まっている事じゃなくて、あくまで僕たちがそういう約束の元に生活を送っているだけなんじゃないか。僕たちは1秒、1分、1時間と時間を相対化して認識していますから「始まって何分経った?」なんて考えがちですが、赤ちゃんはそんなこと考えない。赤ちゃんは「今この瞬間」を生きています。「何分経った」という線引きの中には生きていないのです。
こう考えると、実は大人にとっての時間もあやふやなものである事に思いを巡らせないわけにはいきません。仕事(特に時間を売るバイトなど)の1時間と昼休みの1時間では、昼休みの1時間の方が圧倒的に早く感じますよね。ということは、時間は一定ではないんです。いや、時間の側では一定かも知れませんが、時間を認識する人間の側では一定ではない。あれ? だったらこうなりませんか?
人間の認識の側で時間が一定でないなら、時間の側でも一定ではないのではないか。だって、時間は人間の認識の中にしか存在しないんですから。自然に時計はありません。太陽の昇る時間も潮の満ちる時間も毎日変化しています。毎日同じ尺度で測っている時間は、実は便宜上の約束事でしかないわけです。
赤ちゃんにそんな約束事は通じません。
時間は、僕たち大人がある年齢になった子供達に押し付けている概念なのです。そして、大人は時間という約束事の中にいるのが当たり前すぎて、この概念が自分自身をも縛っている事を忘れています。
朝起きる時間をどうやって決めますか?
ご飯を食べる時間をどうやって決めますか?
自分の体や回りの状態ではなく、時計と相談して決めている人がいっぱいいると思うのです。
赤ちゃんは、まだ時間の約束を交わしていませんから時間から自由です。その赤ちゃんと繋がれば、大人だって時間から解放されるのです。その解放された状態がハッピーなんです。
長々と書いていますが、僕が本当に言いたいのは「ハッピーになりました」という事だけなんです。この文章は「なぜハッピーになったか」を考えているだけのものでしかありません。でも言葉を使うと、どんどん長くなっしてまう上に、大切なものがするすると抜けていきます。
演劇体験は常に言葉の先を行きます。
ダリアさんたちパフォーマーと客席の赤ちゃんが、そんなすごい演劇体験の機会を与えてくれました。
そのダリアさん、次の1・2月に日本にいらっしゃるようですよ。ベイビードラマに関係している人はもちろん、そうでない方も是非チェック!!

※すでに終了しています

今日観た芝居
「sensescapes」(セルビア・スウェーデン)60分。0か月~18か月。ノンバーバル。
「Pim&Theo(ノルウェー・デンマーク・イギリス)80分。15歳以上。英語。
「Phefumla(南アフリカ・ノルウェー)45分。14歳以上。英語&isiXhosa語。

sensescapesの動画はこちら

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