子どもの体験活動などで、子どもがやっている事にいかに大人が口出し、手出しをせず、じっくり待つ事が重要であるかということは、よく言われることだと思います。
では、「想像力」の場合はどうでしょう?
世の中の映像表現は、CGなどの技術によって「より具体的に見せる」方向に突き進んでいます。
ファンタジーにせよ歴史ドラマにせよ、フィクションの世界がまるで本物のような臨場感で物語られているのです。
これは、驚異的な技術の進化の賜物ではありますが、見方を変えれば、「観る側の想像力」という、物語で一番大切な仕事を子ども達から奪っている事にならないでしょうか?
子どもは人形劇が大好きです。
なぜ好きなのでしょう?
かわいいから?
いいえ。人形が自分の想像力を掻き立ててくれる事を知っているからです。
人形劇の1番のポイントは、人形の表情が変わらない、という事です。
目や口が動く人形は出てきます。
でも表情は変わらないんです。
表情は変わらないのに、人形劇に出てくる人形は怒ったり、泣いたり、笑ったりしているように見えます。
それは観ている子ども達の想像力がそうさせているのです。
人の想像力に訴える。これこそが人形劇の1番の仕事です。
これは「動き」にも言えます。
よく動いているように見える人形の動きも、実は遣い手が大切にしているのは「動き」よりも「止まり」であったりします。
「止まり(非稼働部)」によって「動き(稼働部)」を際立たせたり、「止まり」の時間に発動する観客の想像力を基準に「動き」の分量を決めていたりするからです。
優れた人形遣いは、人形を「生きているように使う」のではなく、「生きていると感じるように使っている」のです。
リアリティは、あくまで観客の想像力の先にある、ということです。
人形劇と想像力の関係をお分かりいただけたでしょうか。
話を戻します。
体験活動において子どもに口出し・手出しすべきでないのは、子どもを受け身状態にしないためですが、以上のことから人形劇において子ども達が受け身状態に陥ることは基本的にありえないわけです。
私は、CGやプロジェクションマッピングが全盛の現代だからこそ、子ども達に人形劇体験が求められていると確信しています。
そして本作は、「想像力を借りる」という意味において究極の手法を取り入れています。
それは、「人形を置く」ということです。
人形劇なのに遣い手の松本美里は上演時間の半分近く、置き人形を使います。
人形から手を離してしまうのです。それは子ども達の想像力に全てを委ねる行為なのですが、この時間がたまらなく面白いのです。
その先に「あの」ねずみ婆さんが登場します。
ねずみ婆さんは子ども達の想像力が呼び起こすのです。
人形劇団ひとみ座作品
ひとり人形芝居
『おしいれのぼうけん』
原作:ふるたたるひ・たばたせいいち(童心社)
出演:松本美里
脚本・演出:西上寛樹
5月2日(木)19時00分〜 伊佐市菱刈環境改善センター
5月3日(金)10時30分〜/14時00分〜 伊佐市文化会館
各回50名限定
料金2,000円(3歳以上有料)
※本作品は子ども向け作品ですので子ども・大人同一料金となっております。
※チケット代は映画よりも少し高価ですが、生の舞台は本来お金のかかるものです。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
お申し込みは下記Googleフォームから