2024年1月27日(土)、伊佐市菱刈図書館にて第2回お話づくり講座の発表会を「リーディングスタイル」で行いました。4名の受講生の脚本に、27名の読み手が出演、約50名の聞き手が集まる賑やかな1日となりました。
お話づくり講座とは
鹿児島県伊佐市地域おこし協力隊の西上が開いた市民向け脚本講座。今年で2回目。
月1回、約半年間をかけて脚本の書き方を学んだ受講生が、オリジナル脚本の執筆に挑戦するもの。
リーディングとは
読み手が役に分かれて台本に書かれたセリフを読み上げるもの。演者は台本を覚える必要がないので気軽に参加できる。
目次
1.『滝が見える夜』 川村美由喜 作(約38分)
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作家インタビュー
Q1、自己紹介と講座に参加した理由を教えてください。
川村 演劇集団非常口に所属しています川村美由喜です。昔、まちぶんの時にもシナリオ作りにチャレンジしたのですが最後まで書き上げることができなかったので今回リベンジしたくて参加しました。
西上 書き上がってよかったですね。
川村 先生のおかげです。(笑)
西上 (会場に)この人締切守らないんです!
会場 (笑)
Q2、今リーディングを聞いてみての感想を聞かせてください。
川村…リハの時に「どうぞ皆さんで好きに解釈してください」と言ったら、本当に好きに解釈してくださって、セリフがちょっとずつ変わってて、それが面白くて。あ、これが作家の手を離れるってことなんだ。今は作家の手を離れて役者のところにいるんだなって。あとはまた演出をつけたらきっともっと楽しい作品になるかなーって思いました。また、演じた方の個性がキャラクターに乗っかっていることにも感動しました。読み手さん達が真剣に役に向き合ってくれたことが嬉しかったです。
Q3、なぜこの作品を書こうと思ったのですか?
川村 嵐の二宮和也くんのファンだったんです。二宮和也、和也、かずなり、かずのり。お、いい!よし、この人を主役になんか書けないかなって思って、のやっさんが最初に誕生したんですけど、でものやっさんを主役に物語を進めていくよりも、のやっさんは脇役で盛り上げてくれた方が面白いなと思って。
西上 最初はのやっさんが主役だったんですよね。でものやっさんや、レイコや、全員が主役をパスしていくような全12回のドラマみたいな。
会場 (笑)
Q4、書くときに難しかったこと、楽しかったことを聞かせてください。
川村 あらすじを考えるところまではスッと出てきたんですが、そこから人がセリフを喋り出すってなったら、すごく難しくて。元々(自分は)コミュ障で、会話のキャッチボールが出来ないタイプなんです。だから役の会話が難しくて悩みました。
西上 プロットまでは早かったんですが、そこから苦しんでたなって印象でした。
川村 楽しかったことは沢山あったのですが、西上さんにアドバイスをもらってそれについてあれこれ考えるのが1番楽しかったです。
Q5、この作品を書くことはあなたにとってどんな体験でしたか?
川村 すごく感動的な体験だったんですけどそれだけだとちょっと浅いですよね。
西上 いいんじゃないですか。
川村 頭の片隅で繰り広げられていた妄想が実際にこうやって役になってもらって読んでもらえるっていうのは本当にいい知れない感動が…。書いてよかったなって思います。苦しくもあり楽しくもあり充実した体験でした。
西上 お疲れ様でした!
会場 (拍手)
後日アンケート
Q、その他に感じたことがあれば自由に書いてください。
川村 また書いてみたいと思いました。そして自分がもらった役をもっと大事にしていきたいと思いました。
※川村さんは普段は伊佐の社会人劇団 演劇集団非常口の役者として活動されている。
感想
- 読み手の方たちのかけあいがテンポよく物語に引き込まれました。タキレイコさんが消えるシーンは本当にゾクゾクしました。面白かったです。楽しい時間をありがとうございました。
- すごくその人物になり切っていた。すごく面白かったですし、声や方言がすごくよくて、感動しました。
- 山田将の姿が同年代の何かに刺さる。その中で、のやっさんの存在はとても救いになっているように感じる。
- なにげない日々が続いていていくと思っていてもそうではないという思いが伝わってきました。
川村美由喜 作『滝が見える夜』の脚本をご覧になりたい方は、こちらへ
2.『私の好きなもの』 作道陽佳 作(約12分)
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作家インタビュー
Q1、自己紹介と講座に参加した理由を教えてください。
陽佳 作道陽佳です。6年生です。参加した理由は、親に勧められたのもあるんですけど、去年の発表会を見て「私も書きたいな〜」って思ったから参加しました。
西上 去年は陽佳ちゃんは読み手として出てくれてたんですよね。で、この講座なんですけど実は結構大変なんです。だから今年はやめようかなと思ってたんですよね。そしたら「今年はないんですか?」と言われて、じゃあやろうと思って。ですから今年の講座のきっかけを作ってくれた人です。
陽佳 ありがとうございます。
会場 (笑)
西上 ありがとうございます。ボクもやってよかったです。
Q2、今リーディングを聞いてみての感想を聞かせてください。
陽佳 意外と皆さんが笑ってくれたので嬉しいです。
Q3、なぜこの作品を書こうと思ったのですか?
陽佳 私は猿が好きなんですけど、偏見を無くしたいなと思って。猿が好きでも別におかしくないよって。それで物語を書きました。
西上 (会場に)ただの猿好きのレベルじゃないんです。もうちょっと猿についてお願いします。
陽佳 猿が好きになったきっかけは、母が熊本にある阿蘇カドリードミリオンっていう動物園に連れて行ってくれたんですけど、そこでお猿さんと一緒にショーをしているプーキーズっていうグループがいるんですけど、それに衝撃を受けて、「すごいなー。動物とこんなに仲良くなれるんだなー」って私も動物と仲良くなりたいなーって思って。あと、猿ってこんな可愛いし、すごいんだなっていう事を知って、好きになって、将来はそこで働きたいと思っています。
西上 ちなみに猿の前は牛が好きだったそうです。
会場 (笑)
Q4、書くときに難しかったこと、楽しかったことを聞かせてください。
陽佳 (難しいところはない感じ)。書くときにアイデアがぽんぽん出てきて、あーしようかな〜こーしよーかな〜と迷っている時が楽しかったです。
Q5、この作品を書くことはあなたにとってどんな体験でしたか?
陽佳 物語を初めて書いたんですけど、楽しいし、自分の好きなものをみんなにもちょっとは伝えられるから、他にも色々書いてみたいです。
西上 お疲れ様でした!
会場 (拍手)
感想
- お猿さんのやりとりがかわいかったです。効果音もとてもかわいかったです。物語もとてもステキでした。
- 偏見や子供同士の関係性の変化など、子供の世界を猿を挟んで描いているのが面白かった。本当に手を握り込んでいるのも面白く見ていました。私ももう少し好きなものを好きって言っていこうと思う。
- 明るく楽しくおもしろく。書きたいことがたくさんあるということなので、これからもたくさん書いて、楽しい時間を作ってほしいなと思います。
- おさるのおじさんが面白かったし思っていることがふーむ、なるほどと思いました。読み手の皆さんも上手でひきこまれました。
作道陽佳 作『私の好きなもの』の脚本をご覧になりたい方はこちらへ
3.『さるとり物語』 作道亜矢子 作(約24分)
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作家インタビュー
Q1、自己紹介と講座に参加した理由を教えてください。
亜矢子 作道亜矢子です。事務員をやっております。娘が演劇自体に興味があって、それで去年(娘が)参加したんですけど、そのときに小学生も脚本を書いたということを知って、娘にもできるんじゃないかと思って一緒に参加しました。
Q2、今リーディングを聞いてみての感想を聞かせてください。
亜矢子 とっても面白かったです。やっぱり字だけ見て頭でぶつぶつ考えてるのと、音で感じて、空気で感じるのが全然違う世界なのでそれが面白かったです。紙と頭の中だけで動いていたキャラクターが立体的に目の前に現れたことに感動。
Q3、なぜこの作品を書こうと思ったのですか?
亜矢子 最初に娘が牛を好きになったっていう事情があるんですけど。「牛飼いになりたい」って言った時に、「えっ、そんな大変な仕事を…」って思っちゃったんですね。事務員でぬくぬくと暮らしているので。でも他の人に「そんなこと言っちゃいけないよ」って言われて、「たしかに!」って思って。色んな大変なことがあっても乗り越えるのは本人だから、好きなら好きなことをやらせようと思って、牧場に通って行ったんですけど、そのうちまた違う動物園に行った時に、「次は猿回しだ!」ってなった時に、また親心で「やりな!どんどんやりな!」っていうのと、「心配だな」っていう気持ちがあって、一緒に勉強することにして、そしたら猿の世界が深かった。それで面白くなってしまって、どんどん親子でのめり込んで行ったんですけど、その時にやっぱりいい意見もあるんですけど、私が最初パッと感じたのは心配な意見。「猿回しって虐待じゃないかな」っていう意見ももちろんあって。「たしかになあ」って、思って。でもそういうイメージでやりたいって言ったんじゃなくて、楽しいイメージでやりたいって言ったこととの差は何かなあって。娘が好きになった猿回しの人を見てると、やっぱりそういうことじゃなくて、物語に込めたような前向きな姿勢があった時に、これをくどくど説明するよりこのチャンスに劇に落とし込んでみようかなって気持ちが生まれました。
西上 コンプライアンスに適応した今の時代の猿回しのことが一番分かる作品なんじゃないかなって思います。あと、作者本人が行動的だから主人公も行動的ですよね。どんどん行動してましたよね。
亜矢子 どんどん行動できるのが演劇のいいところですよね。
Q4、書くときに難しかったこと、楽しかったことを聞かせてください。
亜矢子 やっぱり人に見てもらうことが前提なので、自分の言いたいことだけじゃなくて、面白く聞けるモノをどうやったらって悩んでいたんですけど、先生がヒントをくださるのを素直にやっていくと、「おお〜」みたいなことが多くて。ただ難しかったのは削ることです。時間的に削りきれなかったところがありました。
(後日アンケート「終わり方と説明っぽいところを削りきれなかった。」)
西上 やり取りしていて途中から楽しそうに書いてるな、っていうのを感じていました。
亜矢子 文字を書くのが元々好きなので考えながら書くのは楽しかったです。
Q5、この作品を書くことはあなたにとってどんな体験でしたか?
亜矢子 一個ちゃんと作り終わるっていうのをできた、初めての体験でした。昔からマンガを描いたり、音楽家になろうとか小さい頃の夢であるけど、最初の構想だけ作って、マンガも出だしだけ作って終わりまでいかない作品があるんですけど、導きによって「なんとか最後までいったぞ」という経験が出来たのがすごい大きかった。しかもこうやって読んでいただいて、聞いていただいて、大人になっても若い皆さんと一緒にできるのが嬉しかった。
西上 (最年少の出演者を指して)若い。
会場 (笑)
西上 もうなんか別のこと始めてます。
亜矢子 そう。演劇だと年齢が関係なくなるのがすごい嬉しかったです。
西上 お疲れ様でした!
会場 (拍手)
後日アンケート
Q、その他に感じたことがあれば自由に書いてください。
亜矢子 一つ表面的な動作を描くにも、文字にしない背景を全て設定することから始めるプロット作業ということを知り、すごい世界が広がりました。
感想
- えんじててたのしかった
- シロ!最高でした
- 全作品それぞれおもしろかったり、考えさせられる作品でした。人で表現することで心にしみわたると感じました。ありがとうございました。
- 作家の皆さんすばらしい物語をありがとうございました。
作道亜矢子 作『さるとり物語』の脚本がご覧になりたい方はこちらへ
4.『また明日もあそぼうね』 日髙恵子 作(約18分)
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作家インタビュー
Q1、自己紹介と講座に参加した理由を教えてください。
日髙 日髙恵子と言います。応募したのは、今観ていただいたように、19歳の頃から何か刺さったようなものがあるままここまで来てしまいました。それをいつかちゃんと向き合いたいなと思って、その機会になるかなと思って応募しました。
Q2、今リーディングを聞いてみての感想を聞かせてください。
日髙 私が書いたのは紙の上で、それがこうやって立ち上がっていって、皆さんに聞いていただくようなものになるっていうことの素晴らしい経験をさせていただきました。よかったです。
西上 言葉の方は、関西弁がすみません…。
※西上も出演していた
日髙 そうなんです。本当に難しい。関西弁って言っても皆さんがご存知なのって大阪弁なんですね。でも関西って言っても色んなところがあるので、私は丹波で、それはとても田舎で丹波の中でももっと方言のきついところだったんだと思います。それは本当に難しい。書いてたものより本当はもっと。アクセントも難しかったりしてたんですが、本当に皆さんよくやってくださって、よかったと思いました。(読み手の子ども達に)ありがとう。
西上 恵子さんは、脚本を書く時にプロットまでは苦しんでいた方で、そこからセリフを書いた途端にブワーって書き出されたんですよね。それを見た時に、「あ、方言の中に記憶があるんだ」って思って、そういう言葉があるのってすごくいいなあと思いました。
Q3、物語を書こうと思ったきっかけについてもう少しお話いただけますか?
日髙 自分の中にずっとあり続けている後悔。なんであの時聞かなかったのか、分からないんです。今でも分からない。どうして帰ったのにお葬式にもお通夜にも行けなかったのかなっていう思いはあるんです。でも物語と同じで母は認知症になってまして、セリフと同じ事を言いました。もう(二人が)亡くなったことすら忘れていたんですけど、私が聞いたら、「若かったさかい」と言って、若い女の人が若い男の子のお葬式に行くのは良くないって昔から言われとるって認知症の母が言いました。それで、ああ、そういうご時代だったんだなあと思ったんですが、私の中で何か一つ置いてきたものをもう一回自分の中で向き合うことができたら、次…次っていうのもおかしいんですが、どういう形でかちゃんと残してて、また次の自分、ずっと引きずってるんじゃなくて行けるんじゃないかなって思いがあったんですけど、まさに西上さんがおっしゃったように、皆さんがプロットを書く時に、陽佳ちゃんなんてもう飛ぶようにダーって書いていくのが羨ましいくらい、私は詰まってしまって、書けなくって、作れなかったんです。だからどっか体が悪くなって辞めたいなーくらい。
西上 (笑)
日髙 そのくらい思ってたんですけど、西上さんが察知するのが早くて
西上 補習。
会場 (笑)
日髙 私だけ補習を2回も入れてもらって(笑)、「この講座大変なんです」とおしゃっていた時に私がその穴を掘っていたんだなあと思いましたけど、そこを乗り越えさせていただきました。そしてセリフを書いた瞬間に本当に不思議な経験をさせていただきました。昔の私が使ってた子どもの頃の、(出演者を指し)この子達のところにたどり着いた時に、ばーっと沸くように、思い出と色んな匂い、それから曲、音、全部が私の中にぐーっと入ってくるのが分かって、それからは本当に言われなくても向き合って、自分で言葉を紡ぐことができました。
西上 次の質問の「書くときに難しかったこと」という質問は今の中に入っていました。自分の引っかかっていた体験と向き合う難しさ。でもこの作品がもう一つ特徴的だったのは、死者が出てくるところだと思います。子ども時代のことですが、彼らは死者でもあるんです。書くことによって死者と向き合っていたと思うんですけど、最後の質問です。
Q5、この作品を書くことは、あなたにとってどんな体験でしたか?
日髙 しっかりと向き合えてあの人達と会うことができました。本当に会うことができました。寺師さんが1週間前の練習の時には難しそうにされていて、でも始まる前に「お父ちゃんの声が聞きたいんです」と言ったら、本当に聞かせてくださって、私は亡くなった父とも会えて、カズちゃんやテッちゃんとも会えました今日。本当にありがたいなあと思います。
西上 本当にお疲れ様でした。
会場 (拍手)
後日アンケート
日髙 最初は思いばかりがあって、書くことにつなけられず、途中何度も何が書きたいのか、書きたかったのかを見失しなって向き合うことから逃げていました。西上さんが、私の頭の中を整理してくださり、他の受講生の方の意見を聞きながら少しずつ向き合うことができました。最後まで投げ出さずに書いて、演じてもらえて幸せな時間を過ごすことができました。
文字を声に出して読む、セリフを声に出して読む。皆で回し読みをする。
一人で文章やセリフと向き合っているのとは違ったことか見えてきてとてもよかったです。西上さんもお忙しい中、大切な時間を私たちに与えてくださり。心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
感想
- 内容にひきこまれました。作家さんの話をきいてまた涙がでました。ステキなお話ありがとうございました。
- 最後の方で自然と涙が出てきました。作品を書かれた方のお話を聞いて、その理由が分かったような気がしました。劇を通してもう二度とは会えない人たちと出会えるんだなと思いました。
- しまくらちおこのところがおもしろかった。
- 自分の年代の風景がうかびました。作者の心の中を知り心をうたれました。
- 昔の事を思い出しながら作品の中にひかれていきました。心の中の思い、自分自身の事もフラッシュバックしてしまう作品でした。
- 子供達、それぞれなりきって上手でした。
- さとしとケイコが実際よりすてきな人たちになってました(笑)。ストーリーも想像しやすかったです。
日髙恵子 作『また明日も遊ぼうね』の脚本がご覧になりたい方はこちらへ
リラックスタイム
「声出しで大事なのはリラックス〜」
というわけで、今年もリハーサルの日と本番の前に人形劇団ひとみ座の松本美里さんが声出しワークショップ&ウォーミングアップを担当してくれました。