伊佐日記2〜水編。お隣さんの湧き水を汲ませてもらう生活から水道を引き込むまで。あなたは1日に何リットルの水を使いますか?〜

鹿児島県伊佐市での新生活を伊佐日記としてレポートします! と意気込んで二ヶ月そのまま放置してしまいました。シロアリとの闘いが始まりブログどころでありませんでした。その闘いも一区切りがつきましたので、第二弾をレポートします。大事な大事な水のこと。

目次

この家、水がない!

空き家バンク物件には、水がない家が結構あります。
「水道がない」じゃなくて「水がない」と書いたのは、田舎では上水道を引かずに井戸水や湧き水、山水を利用して生活されている家庭がまだまだたくさんあるからです。
ボク達の引っ越した集落では、井戸水や湧き水を飲用水、料理用に使い、お風呂や洗濯、畑の水やりなどは上水道でまかなう、という家が多いです。

しかし、我が家にはどうしたわけか上水道も井戸もありません!

空き家になって25年。ご近所さんのおぼろげな記憶では「山水を引っ張ってきていた」とのこと。でもそれがどこから引いてきていたかは分からず、自分たちもやってみるというのは難しそうです。

当たり前のことですが、人間が生きていく上で一番大切なのは水です。ボクも美里さんもこの家に惚れ込んだのですが肝腎要の水がない! 話し合った結果ボク達が下した決断は……

しばらくお隣さんの湧き水を汲ませてもらおう!

というもの。

家の下見の時にお隣のおばあちゃん(90歳)に「ウチの水使っていいですからね」とおっしゃっていただいたのを真に受けた格好です。

我ながらなんと図々しいことでしょう。でも誤解を恐れずに言えば、ボク達はこの図々しさが大切だと考えていました。

「人を頼れる人間になる」。これも今回の移住の一つのテーマだったからです。

どんどん人に助けてもらって、その分いつでも頼ってもらえる存在になろう!

というわけで最初にやったのは1日に自分たちがどれだけの水を使っているのか把握する、ということです。

1日何リットルの水を使うか

みなさん、これ答えられますか?

我が家の場合は、飲用と料理用で5リットル、洗い物(洗顔、歯磨き含む)に10リットル、少し余裕を持って大体20リットルだろうと試算しました。この時はまだ東京のアパート暮らし。ペットボトルを使ってどれくらいの水を使っているか測って導き出しました。

あ、ここではトイレ、洗濯、お風呂で使用する水は計算に入れていません。移住した我が家のトイレは前回ご紹介したようにバイオトイレなので水を使いませんし、洗濯機は電気がないのでしばらく置きません。コインランドリーを使います。お風呂は薪風呂が壊れているので温泉へ。その上での1日20リットルという計算です。

ちなみに東京都水道局のHPでは、「家庭で一人が1日に使う水の量は、平均214リットル(令和元年度)程度です」と記されています。

そんなに!?

どうやら歯磨きで30秒間水を流しっぱなしにしたら6リットルの水を使うことになるそうです。

そんな馬鹿なことはないので、ウチで試算する時にはうがいの一回一回蛇口を止めて計算しました。そこで弾き出された数字が1日二人で約20リットル、というわけです。この計算、大体当たってました。

水を汲む

それでは早速お隣さんの湧き水を汲みにいきます。

お隣さん宅では美味しい地下水がずっと湧き出ています
実際にタンクに入れる時はこちらの電動ポンプを使用します
野菜を洗う時はさっきの場所で
水を汲んだら帰ります(普段はボクの仕事です)
汲んできた水をウォーターサーバーに移して使用します

と、こんな感じで二ヶ月弱生活してみました。
厳密に毎日測っているわけじゃありませんが、まあ大体1日20リットルくらいですね。水は圧倒的に洗い物に消費します。ご飯は外で薪を炊いて煮炊きしているのでお皿やコップもアウトドア用品を使っています。

料理に合わせて好きな器を使う

というのは、水道が通って水をじゃんじゃん使えるようになってから始まった生活習慣だと思いましたね。それまでは公家かお殿様か大商人でもない限り、洗いやすい器を使っていたのではないでしょうか? 逆から捉えると、今の日本人はみんなお殿様くらいの水量を消費しているということなんでしょうね。

井戸か上水道か

さて、いつまでも湧き水をいただいているわけにもいきません。ウチの水をどうするか決める時がやってきました。

もちろん第一希望は井戸水です。早速井戸屋さんに聞いてみました。

西上 どれくらい掘ったら出てきますか?

井戸屋さん 掘ってみないと分からんけど、少なくとも80メートル。

西上 費用はどれくらいですか?

井戸屋さん 1メートル1万2千円。

西上 ……じゃあ、上水道で。

というわけで、我が家は上水道を引くことにしました。(井戸屋さんは上水道工事も請け負っていました)

お隣さんは最後まで湧き水をウチに引っ張る方法を考えてくれていました。いくら図々しいボク達でもさすがにそこまではお願い出来ません。お気持ちだけいただきました。本当にありがたいことです。

水道をどこに引くか

次に出てくるのは水道をどこに引くか、という問題です。

え? 台所とお風呂と洗面所じゃないの?

いや、それだと今までの生活と変わりません。それだとまた水をジャバジャバ使い始めると思うので、納屋の前に一つだけ水栓柱を立てることにしました。

赤枠に水栓柱を立てる。土間まで約10メートル。

誤解を招きなくないので一応お断りしておくとボクは別に環境問題に配慮して水を節約しているわけではありません。もっと体を使って生きてみたいだけです。

ちなみにこれはボクのわがままで、美里さんとしては台所まで引きたかったようです。それはそうでしょう。それでもとりあえずこれで生活してみることにさせてもらいました。もし我慢できなくなったらその時は台所まで引っ張ればいいわけですからね。一回で答えを出そうとしなければいろんなことに挑戦できます。

水栓柱を作る

家に唯一の水道ですから気に入ったものを使いたい。
というわけで水栓柱選びを始めたのですが、なかなか気に入ったのがありません。色々考えた結果枕木を買ってそこに穴を開けて使うことにしました。

ホームセンターの工作室で枕木に穴を開ける
慣れない作業にビビってます
蛇口はこちら。ではなくこれと同じものをネットオークションで安く手に入れました

水道工事

ここからは井戸屋さんの作業です。

道路の上水道を納屋前に引き込む作業
水栓柱を埋めるための穴
完成!

水の受け皿はお隣さんの湧き水の受け皿と同じものです。これは昔牛の水飲み用に用いられていたもので、この地域は40年ほど前まで畜産農家でなくとも各家庭に一頭は牛を飼っていて農作業に使役していたそうです。
上記写真の水栓柱の後ろにある四角い木枠が牛が顔を出して水を飲む場所ですから、ウチの受け皿は、また同じ場所に戻ってきた格好になりますね。

これで総工費約15万円。
ボクが用意したソケットや配管した塩ビパイプに不備があり、工事を担当してくださった井戸屋さんにはご迷惑をおかけしました。結局下見も合わせて5回くらいウチに来てくれました。
前もって電話が来るわけではなくいつも突然やってくる井戸屋さん。ボク達の方も予定があるわけでもないので「明日あたり来るかもね」とのんびり待っていました。
そういえば伊佐に来て時計を見る回数が激減した気が……。ボク達には、今こういうリズムが必要です。

水道料金は……

上水道が通って40日。先日初めて明細が届きました。

572円(税込)

ウチの水道の口径は「13㎜」、使った水量は「1m3」ですからこれは伊佐市の最低の水道料金です。この期間中に実は床下のコンクリ打ちも行っており、その時は道具に付着した生コンを洗い流すのに大量の水を使いました。それでも「1m3」だったわけですから、今後の検針でこの料金を超えることはおそらく無いでしょう。

トイレと洗濯とお風呂がなければ水は大体これくらいしか使わないということが分かりました。でもここでもう一つ疑問が生まれます。

「1m3」はリットルに直せば1000リットル。

これって本当に少ないんだろうか……。

祖母の記憶

ボクの祖母は、夫(祖父)を亡くしてから昔の話をよくするようになりました。その時に「昔はあそこに住んでた」と、昔住んでた家のことを話してくれたことがあります。祖母の仕事は朝4時の水汲みから始まったそうです。家は小高いところに立っていたそうですから、井戸で汲んだ水を桶で運んで行くのはさぞ骨が折れたことでしょう。祖母はボクが物心ついてからは、体のどこも悪くないのに週に1回は必ずお医者に行く、というような人でしたから若き日の祖母がそんな苦労をしていたことは意外でした。祖母はそれからしばらくして亡くなりました。最後に話す話は苦労話ばかりでした。

ボクが水を毎朝汲みに行ってみたい、と思うようになったのは、こういうことがあったからです。
そして今まさに自分も水を汲みながら、祖母はあの時、ただ自分が苦労してきたことを伝えたかったわけではなく、自分にとってかけがえのない記憶を思い出していたのではないだろうか、そんなことを考えています。


最後までご覧いただきましてありがとうございました。
次回の伊佐日記は、「電気」について書いてみようと思います。
自家製太陽光発電生活ももう少しで三ヶ月。電気はどうしてるのかレポートします。

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