首の動きから考える劇とテレビの観劇態度の違い ~甥っ子姪っ子より~

「甥っ子姪っ子は演劇の先生!」シリーズ。姪っ子甥っ子は、一緒に遊んでいるだけで様々な事を教えてくれる、というこのシリーズも今期ラストです。(二人とも沖縄に帰ってしまった)
今回は、劇とTVの違いについて。

甥っ子(9歳)姪っ子(6歳)と一緒にいて、気になることがありました。二人が、劇を観ている時とTVを観ている時で、様子が明らかに違うのです。
僕たちはこの夏休み、三本の芝居を観ました。
観劇中、甥っ子姪っ子はこちらをチラチラ見てきます。
多分、面白いことやびっくりしたことを共有したいのでしょう。劇を観ていて、フッとこちらを見る。こちらもフッと見返すとお互い笑顔。そしてまたすぐに舞台へ視線を戻します。集中していると、このリズムがいい感じ。「劇の内容」だけでなく、「一緒に劇を観ている事」そのものを三人で楽しんでいる感じ。

これがTVにはない。

というより、TVを点けると姪っ子たちは固まります。目が画面に釘付けになって、首が動かなくなる。
いや、楽しんでるんですよ。すごい集中力です。でもそこにボクが入りこむ隙間がない。

「あれ? がむくんいたの?」

という感じ。※がむとはボクのあだ名。
この違いは何でしょう? テレビと演劇の差を指してよく、

テレビは一人で観る。演劇はみんなで観る。

と、言われますがそういうことでしょうか。
では、映画はどうでしょう? 映画もみんなで観ますよね。
学生時代、僕は日本映画学校という専門学校に通っていました。
一度、ゼミに黒澤清監督が来てくれたことがあり、そこでビデオと映画の違いは何か? という疑問を投げかけられました。
僕達学生は、「スクリーンの大きさ」「音の奥行き」「色の深さ」など技術的な違いを羅列しましたが、黒澤清監督は一言「映画はみんなで観る。人と自分の違いを知る場所である。」と、言いました。
僕が「一人で観る事」と、「みんなで観る事」の差を考え始めたのはこの時からです。
でもここで新たな疑問。

映画館で面白い事があった時に、子供は親の顔を見るでしょうか?

僕は甥っ子姪っ子と映画館に行ったことがないのでこの経験がありません。
なので昨日、稽古場で小学生のお子さんがいる先輩に質問してみました。すると「見ないね。」という答え。まあ、映画館は暗いから顔を見ようとしても見えないでしょう。でも、もし顔が見えたとしてもこちらを観るかどうか…テレビアニメを観ている時の甥っ子たちの表情から推測するに、見ないような気が…だって本当に、そのまま画面に吸い込まれそうな位固まって観ていたんですから。
僕はこの「固まって」という所に引っかかっています。面白いものを観ていて、時々笑いもするけれども、基本的に顔に表情がない。そして、首がまったく動かない。
舞台を観る時は、姪っ子甥っ子は、もっと動きます。首も動かせば、前のめりにもなる。びっくりすれば肩があがります。まあ、これは恐い映像作品を観たら同じ反応かな。でも全体的に固まってる感じはしません。反対に客席背もたれに背中をずっとくっつけていたら「ああ。つまんないんだな。」と思う。
また姪っ子は、ある芝居を観ている時、僕の膝に乗って来ました。これは恐い場面ではありません。登場人物がその人物のお母さんに叱られた場面です。その場面が終わって少しすると、姪っ子は僕の膝の上に登ってくる。不安になったんでしょう。ざわざわした気持ちが落ち着くまで体をくっつけて自分を安定させる。そして落ちつくと、また自分の席に戻っていく。飽きたから席を離れたのではなく、話にのめり込んでいるからこそ席を離れたわけですね。(子供は観劇中不安になるとお母さんを探す、というのは人形劇団ひぽぽたあむの代表・永野むつみさんから聞いていたので「これが噂の!」と、注意することなく、そのまま受け入れる事が出来ました)
とにかく、二人は観劇中よく動く。そして、喋ります。分からないことを聞いてくるだけでなく、舞台で起こっている事を僕に説明してきます。これも共有願望ですね。

体が動く。顔を合わせる。言葉にする。

これが舞台芸術における子供の観劇態度の特徴です。
不思議なのは、姪っ子甥っ子がこの状態になった時、僕自身ハッピーになったこと。
人(演者)の動きで人(観客)の体が連動する。
人(演者)を見て、人が(観客)が顔を見合わせる。
人(演者)を見て、人(姪っ子)が人(僕)にその様子を語る。

ハッピーは、すべて人と人がつながった状態に発生しています。

これはどういうことでしょう?

演劇の特徴に人の幸せの秘密があり、その秘密については、子供が一番詳しい。
その事だけは間違いない気がしています。

※以上のような事を書きながら、僕は甥っ子姪っ子のお守りをした二日間、朝二人にアニメを見てもらってその間に自分の仕事を済ませていました。そういう事も多々あります。
※写真は、沖縄から東京に連れて帰る時。飛行機に乗るや否やヘッドホンを身に着けて僕の存在を忘れる甥っ子姪っ子。

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