「神様は賑やかなところにしか降りてこない」 〜韓国のシャーマンのパフォーマンスに参加して〜

韓国演劇ツアー1日目ノートより※Facebookから再掲載

昨日(2019年10月9日)からソウルに来ています。
富川市で開かれる児童演劇の(その中でもとりわけ対象年齢の小さい乳幼児向け)のフェスティバルを観るためなのですが、ボクはそれだけじゃなくて韓国の伝統芸能も観たい!
というわけで昨日は、「第22回ソウル世界の舞踊フェスティバルSIDance2019」で国内招請作として発表された『太平聖代、ヘトゴク迎える』というイベントを観てきました。この中に黄海道を代表するシャーマンが出てきます。場所は「KOUS」と呼ばれる韓国文化保護財団が運営する伝統文化体験施設内のホール。情報は、韓国の児童劇団ミンドレレのメンバーであり、ジャッキーベイビーミニシアターのメンバーでもあるイ・ミヒさんに教えていただきましたた。ミヒさんは韓国伝統芸能の研究者でもあります。

で、韓国のシャーマンのパフォーマンスに触れて最初に思ったことがタイトルにも書いた通り、

ああ……神様って賑やかにしてないと降りてきてくれないんだあ

いや、もうとにかくムーダンのパワーは凄まじい。(ムーダンとは韓国のシャーマンのこと。多くは女性が務める)
何がすごいかってまず、参加者をめちゃくちゃ笑わせるんです。
ボク、ムーダンってシャーマンっていうからには何か寡黙で、俗にまみれてなくて、祈りの最中に変な音でも出した暁には鋭い目つきで睨まれるみたいなイメージがあったんですが、全く違う。「私が祈ってる間は静かに聞いてなさい」なんてことは全くなくて盛り上げる盛り上げる。あれはジョークを飛ばしているのか、登場するや200人を超える参加者をどんどん笑わせて大騒ぎにさせたかと思ったら、今度はおもむろに歌いだす。そしてクルクルと回り始める。さっきまで大騒ぎしていた参加者は静かになってムーダンの動きを見守っています。演奏はチャルメラ2本。日本だとチャルメラはラーメン屋のイメージですが、本場のチャルメラはもっとグルービー。大音量で会場内を音楽で満たし、聞いているとだんだんハイになってきます。さっきの笑いもこの大音量も、ここが公共の伝統文化ホールということを忘れさせます。全然格式ばってない。というか、最前列の2列は椅子席じゃなくて桟敷席。立見も沢山。(ボクも立見)感じたままを率直に言うと、超盛り上がってるディナーショー。会場がもう一体と化しています。ムーダンは「儀式を取り仕切る司祭」と本で読みましたが、まさに儀式を牛耳る立役者。スター。
でもこの催しがディナーショーと違うのは、ムーダンはあくまで神様を媒介させていること。参加者はムーダンの取り仕切るイベントに一体となりながらもそこに神様を感じ、祈っています。ムーダンを羨望の眼差しで見ているだけじゃない。
やがて、ムーダンが踊っている横で参加者はどんどん舞台に上がり五体投地のようなことをはじめました。
座席で祈っている方も多数います。でもこれが全く閉鎖的じゃない朗らかな祈りだったことをボクは伝えたい! ボクはよそ者ですよ。信仰心があってここにきた訳じゃないし、まして韓国語も分からない。でもそんなよそ者がきょとんとここに立っていても「居辛さ」を全く感じさせないんです。そう。明るい。
で、ボクがなぜ客席に座っている人たちのことを「観客」と呼ばずに「参加者」と呼んだかというと、言葉通り、ここにいる人たちが参加者だったから。祈りを捧げるだけじゃなく、ムーダンの前に置かれたタライにマッコリが注がれ、それをムーダンがズズズっと飲むと、今度はそれを参加者が舞台に上がって一口ずつ飲んでいく。同時に舞台から大皿料理が振る舞われ、みんな食べ始める。クッ(このような儀式)について調べていた時「飲食歌舞」と言う言葉が出てきましたが、まさにこれだ! 祈ること、食べること、飲むことは全て一緒のこと。共同体を共同体たらしめる大切な儀式。そしてそこには神様がいる。その神様はこのムーダンくらいパワフルで明るくないと降ろせない。チャルメラが賑々しく鳴り響いてないと神様は降りてこない。神様は楽しいことが好きなんですね。絶対踊って降りてきてますよあれは。
いやあ、いい!! 1日目から出だし好調です。こんな素晴らしいイベントを紹介してくれてミヒさんに感謝です!!

あと他に剣舞なども見て、まだまだ書きたいことはあるんですが、もう出発の時間。今日はまずベイビーミニシアターの演出家ジャッキーの講演を聞く予定。え? 韓国語で? さあ……でもいいんです。分かる分からないじゃない。ワクワクするかしないかです。
写真はみんなが杯を交わしているところ。

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