勝手に対談! RINA(劇団AFRICA)×西上寛樹/sideA「子守唄の周波数」

誰に頼まれたわけでもなく、気になる人と勝手に対談するシリーズ。今回は、劇団さんぽの新作『イノシシと月』で音楽(作曲)・振り付けを担当してくださった劇団AFRICAのRINAさんと行いました。前半はインタビュー、後半から対談形式で進めていきます。

RINAさんと音楽との出会い

西上 今日は、七輪を挟んでのバーベキュー対談です。よろしくお願いします。

RINAさん よろしくお願いします。(笑)

西上 最初は、ボクの方から質問していきますね。その質問も実は、藤井家三兄弟から募集しておいたものなんですが。(笑)まあ、とにかくいってみましょう。

Q、 なんで音楽を始めたの? (たいがくん・3年生)

RINAさん 何か深い質問ですね(笑)。小学校4年生の時にエレクトーンを1年間だけ習いました。元々家にエレクトーンがあったんですね。 最初は好きに弾いてたんですが、習いに行きたいという思いがありました。で、楽しかったんですけど、学校の事情とか音楽教室の事情とかがあって、通えなくなっちゃって、それで辞めて以来は、特に音楽を習ったわけじゃないんですね。好きで弾いたり、自分で楽譜を買ってきて弾いたりはしたんですけど。

西上 どんな曲を?

RINAさん スタジオジブリの曲とかを。

西上 それは何歳くらいの時ですか?

RINAさん 中学校とか高校生とかですかね。そのくらいですね音楽に触れているのは。で、私あんまりJポップには興味がなくて………。

西上 どんな音楽を聞いてたんですか?

RINAさん 虫の鳴き声とか鳥の鳴き声とか聞いてました。(笑)ロックとかも好きじゃなくて。友達が持ってくる曲で、槇原敬之とかそういうのはなんとなく聞いてたけど、自分で CD を買ったりはしなかったです。

西上 じゃあ初めて買ったCDは?

RINAさん 多分Kula Shakerっていうイギリスのバンド。初めてのコンサートもその人たちかな。洋楽はDiana Rossとかサイモン&Simon & Garfunkelとか聞いてたんですけど。 

西上 渋いですね。

RINAさん たまたま家にあったのを聞いてたら「これいいな」って。だから高校生ぐらいから洋楽を聴くようになって、でも音楽を自分でするとかしたいとかできるとか思ってなかったです。

西上 じゃあ、中高生の時は何にエネルギーを割いてたんですか?

RINAさん 私、本当に根暗だったので、 休み時間は小さい図書室があったんですけどそこに行って本を読んだり、司書の先生と話してました。あとは、その時にハマった歴史上の人物の家系図を作ったりしてました。 (笑)あとは兄がベースをやってたから、チケットを買って観に行ったりとかしてましたけど、自分からはやってなかった。

リズムに乗って動くって楽しい!

RINAさん じゃあなんで音楽をするようになったかというと、ダンスとかリズムとかが好きなことに気づいたんですね。通っていた高校はキリスト教系の学校でとっても古風な雰囲気があったんですけど、一回フォークダンスをしたんですね。それまで中学校の時とかに創作ダンスとかを無理やりさせられたことはあったんですけど、あんなの大嫌いで、覚えるのとかみんなと合わせるのとか嫌だったんですね。でもそのフォークダンスの時初めて「リズムに乗って動く」ことを知ったんです。踊るための音楽。その時「あ、これ楽しい!」と思ったんですね。その時にオーストラリアからの留学生がクラブに連れて行ってくれて、18歳くらいの時かな。それがめっちゃ面白くして。音楽聞いて踊るってことが。何この世界! で、「あ、こういう音楽なら好きかも」って。エイサーを初めて観たのもその頃。「なんだこの太鼓に合わせて踊るあの力強い感じ」。で、それから私もやりたいと思ったんです。

西上 クラブでは最初からすんなり入って行けたんですか?

RINAさん いや、最初は踊れないし、どうしていいかわからないしだったんですけど、まあ暗いし、誰も人のこと気にしてないじゃないですか。で、そのオーストラリアの女の子は上手いんです。行き慣れてるから。その子が「いいんだよ好きにやれば」ってノせてくれて、で全然上手くないけどとりあえずノったら「たのし〜」みたいな。

西上 じゃあリナさんのダンスは習うからじゃなくて、ノっていくとか楽しむからスタートしてるんですね。

RINAさん それから太鼓とかリズム隊に興味を持ちました。

西上 最初にやった楽器は?

RINAさん ジェンベ。ずっとやりたいとは思ってたんですけど、教えてくれるところとかなかったんですね。それが21、2歳くらいの時、バックパッカーとしてタイに旅行した時に、フランス人の人でアフリカとかも旅してて楽器を教えてる人に出会ったんです。たまたま電柱に張り紙してて。で、電話して習ったんです。それから福岡に戻ってきてジェンベを習ったりしたんですけど、その頃からダンスも習うようになって、ダンスの方に鞍替えしていきました。ジェンベは叩ける場所も限られるし、重たいので。(笑)

体の声が聞こえてきた

西上 ダンスはアフリカのダンスから入って行ったんですか?

RINAさん そこはスポーツクラブみたいなところで、アフリカン教えてる人もいれば、ジャズとかラテンとかバレエとか、色々なダンスを教えてたんですね。とりあえず自分が受けられるものをとにかく受けて、その中でしっくりきたのがアフリカンとラテンでしたね。

西上 立ち姿とかがスッと立ってるので小っちゃい頃から何かやってたのかと思ってました。

RINAさん へ〜。自分では、そこまで意識とかはしてないんですけど……。でも昔自分がそういう人たちに憧れてたところがあるので、重心を引き上げてる感じとか、自分がやり出したらそれが身についたんですかね。(笑)
あと、ストレッチをすると自分が「一番居たい位置」に戻れるんですよね。あ、ここが自分のポジションだっていう体の位置。体のいろんなところの詰まってるところの力が抜けて、ピッて一本入ったような感じにはなるかも。

西上 そういうことを自覚出来るようになるのはいつ頃ですか?

RINAさん ものすごい時間がかかりましたね。最初は先生の言ってる意味が分からなかったですもん。足あげるのも「足で上げるんじゃなくて腹筋使って上げるんだよ」って言われて、「え?」とか。「足あげて。いや、高く上げるってことじゃないの。下げて。腹筋使って」「うん?」みたいな(笑)。何度やっても出来なくて、でも劇団AFRICAって最初の立ち上げの時はもう10年以上前なんですけど、私なんか本当にひよっこのひよっこのひよっこで、だからとりあえず真似してやってみる、という所から始まったんです。その頃は劇団としてのトレーニング量もすごくて、上の人がみんなを引き上げるために。それがあって今多少踊れるところにいると思うんですけど、その間に身についたんだと思います。その頃は平日はみんな仕事終わったあとリハーサル(練習)して、週末は6時間から8時間くらい場所とってほぼ1日くったくたになるまでやってましたね。

プロになると何が変わる?

西上 劇団AFRICAへの入団のきっかけは何だったんですか?

RINAさん 元々私が劇団AFRICAの代表のRumikoさんの教室に行ってたんですよ。他の先生にも習ってて、それで1、2年した時に「こんなの始めるから入りなよ」って声をかけてもらって一緒に習ってた子達と入った形ですね。

西上 それまでは習うものだったのが、それで今度は観てもらう立場になるわけですよね。その違いはどうでしたか?

RINAさん 自分自身の楽しいものが無くなってしまったらダンスとしての魅力は無くなるんだと思うんですけど、観ている人も楽しませたいという思いもいるんですよね。ただそうは言っても自分はまだ下手、「何やってんのその形」とか言われて、見せれるものに変えて行ったり。あと劇団AFRICAの場合はみんなでユニゾンで踊る時とかはやっぱりみんなが揃ってないと綺麗じゃないから、群舞として「見せるための意識」がないと美しくならない。そういうのが大きな違いかなあ。

場所によってパフォーマーにどんな変化が起こるか

西上 では、そういうパフォーマンスを行う場所、例えばホールとか野外とか学校とか色々あると思うんですが、そうやって場所が変わることによってパフォーマーにどんな影響が出るでしょう?

RINAさん まず、お客さんの数がとっても少なかったりとか遠いところに居たりとか、そういうことで踊っていてもテンションを上げにくい、というのはやっぱりありますけど……。

西上 他に、お客さんが椅子に座っている時と立ち見の場合はどうでしょう?

RINAさん 立ち見の人がいる方が、お客さんもノリやすいと思うんですよね。椅子だとどうしても「ここから動かない」という観る側の無言の制約がやっぱりあるから、椅子の上でリズムをとったり手拍子しても体全体でノルっていうのがやりにくいと思うんですよね。それがノッてきた人は多分立つと思うんですよね。そういう意味で立ってた方がお客さんもノッて来るから、そしたらそれは演者にも伝わってきますから、そっちの方が楽しいっていうのはありますね。

西上 日本人の場合、自分を止めちゃうとか、立ちづらいとかいう意識があると思うんです。でも子ども達の場合はどうですか?

RINAさん 子どもたちはやっぱり感じたものをそのまま(演者に)戻してくれるので、幼稚園とか小学校くらいだとやりやすいっていうのはありますね。

西上 普段劇団AFRICAのパフォーマンスって、子ども達はどんな風になるんですか?

RINAさん 今やってる小学校公演とかだと、結構巻き込むんですね。ストーリーの途中で子ども達を舞台にあがってもらったりもするし、最後みんなで踊ったりもします。最初子どもたちは舞台に上がることを「えー!」とか言ってるんですが、結構希望者が出るんです。だから自分の友達とかがやってるとノッていきやすいということもあると思います。
あと、音楽の中でどんどん開放されていってテンションが上がっていくから、おどろおどろしい場面では「きゃー」とか声も上がるし、それはやってて楽しいですよね。

西上 例えば同じダンスパフォーマンスの客席参加の場面でもバレエとかヒップホップとかジャズとかの場合、そのダンスを習ってたら舞台に立てるけど、そうじゃない場合は立ちづらいとかあると思うんです。でもその点、アフリカンだと参加しやすそうだなあと思いながら想像していました。

西アフリカにおける音楽・ダンスのあり方

西上 アフリカではどういう時に音楽やダンスが行われるんでしょうか?

RINAさん 劇団AFRICAは西アフリカの伝統的な音楽や踊りを取り入れているんですが、向こうではやっぱり結婚式だったり、割礼だったり、お祭りの中で生霊を呼ぶ場合だったりとか、行事ごとにリズムが決まってるんですね。そういうのが元々村々にある中で、今はそれを元に作られたアフリカのバレエ団があるんです。

西上 プロ集団がいるということですね。

RINAさん はい。それが国立であったり、地域ごとにあって、その中でパフォーマーが活躍している。その中には、その家伝統の音楽を親から子へ子から孫へ受け継いでいる家系の人も活躍しています。アーティストとしてちゃんと地位が確立しているわけですね。

西上 それは国でいうとどこになりますか?

RINAさん 劇団AFRICAが行うスタイルでいうと主にギニア共和国。またあの辺り一帯で言えば、セネガル、マリ、コートジボワール、ナイジェリアとかですね。

客席の形

西上 ボクはその時にどんな形で人が集っているかということが気になるんです。例えばプロとしてのパフォーマンスの時や、村々で行われるような儀式の時に、人々は演者と観衆で向かい合っているのかそれとも円形に囲んでいるのか、その時に椅子席は用意されるのか、パフォーマーと観衆は同じ高さに立っているのか、それともパフォーマーは一段高いところにいるのかとかなんですが、RINAさんが観た範囲のことでいいので教えてください。

RINAさん パフォーマンスの場合だとステージがあって椅子席があってという場合もあるし、フラットな場所の時もあります。体育館みたいな大きな倉庫で。そもそもが裕福な国ではないので、劇場のような建物はあまりないんです。だから、やってる最中に音楽が落ちちゃうとか。(笑)でも音楽はずっと鳴り続けてててみたいな。

西上 野外ではどうですか?

RINAさん まず昼間は基本的に暑いから、野外では出来ないですよね。夜はありますよ。

南アフリカで見たもの

西上 ボクとリナさんが最初に会ったのは、2017年に南アフリカで行われたアシテジ世界大会(児童演劇の世界大会)だったわけですが、その時にボクが思ったのは、「南アフリカの人は、みんなすぐ歌うな」という事だったんです。本番を待つ列の中で歌が始まっちゃう。その時に踊りもセットになってる。そして歌は、必ずハーモニーを伴ってる。日本だとのど自慢がいて、周りで手拍子して、というのがあるかもしれないですけど、南アフリカではハモることが前提になってる感じ。音楽のあり方が日本と全然違うな、と思ったんです。例えばボクなんかは全然ハモることができません。ハモることはボクにとって習って初めて出来ること。でもこの人たちは習ってなさそう。

RINAさん 受け継いできた血の中にありそうな感じですよね。

西上 西アフリカの場合の音楽もハーモニーなんですか?

RINAさん それはまずハーモニーの定義を私がどう捉えているか、ということにもなりますが、リズムとダンスの関係もハーモニーと言えると思うんです。まず向こうは一口にリズムと言っても太鼓が何種類もあります。まずベースのリズムの太鼓があって、その上にもう幾つか重ねるリズムがあって、それプラスソリストがソロを叩くというのが基本です。この時点でハーモニーになってるんです。音程、音色の違いがその中にすでにある。そのグルーブの中にダンサーが入っていきます。そしてそのダンスに合わせたジャンベのソロフレーズがあります。この絶対の形は、やっぱりハーモニーなんじゃないかなって思いますね。

西上 そこに歌はどう関わってきますか?

RINAさん 歌もあります。このリズムの時によく歌う歌とか、この部族で歌う歌とか。ただ、南アフリカで聞いたようなハーモニーは西アフリカにはないですね。あんなに豊かなハーモニーが自然に出てきて、その中にはどこでとっているか分からない音程も入っている。そこだけを聞いたら不協和音みたいに聞こえるけど、重なりの中では綺麗に響く。あんな音の出し方は西アフリカでは聞いたことないし、日本でも聞いたことないですね。

西上 ではここで再び子ども達からの質問です。

Q、好きな色は何色?(ゆうちゃん・1年生)

RINAさん その時で変わるかなあ。ちょっと前まではブルーが好きで、気付いたら全部ブルーみたいな。それとか「今日は黄色を着たいな」とか。

西上 じゃあ嫌いな色はありますか?

RINAさん あんまりないですね。それより色遊びが好き。どの色もこう使ったら「これでいける」みたいな。

西上 なるほど。ちなみにゆうちゃんは紫が好きみたいです。

RINAさん 着ていたフリース紫でしたもんね。可愛いピンクっぽい紫。

西上 はい。では子どもたちから最後の質問です。

Q、誕生日はいつですか?(りょうくん・4歳)

RINAさん 12月21日です。

西上 冬生まれなんですね。

RINAさん はい。(笑)

創作を通して

西上 じゃあ、今度はボクから質問します。今回『イノシシと月』ですけど、最初に山に入ったんですよね。劇団としては、新作は昔話の中でという構想があったわけですが、とにかく山に行きましょうと。で、RINAさんもぜひご一緒にと。さっきのりょうくんも一緒でした。こんな作品創作の入り口をRINAさんがどういう風に感じていたか、ということを教えてください。

RINAさん 最初に西上くんから「山に入って感じたことを作品づくりに反映させていきたい」ということを聞いてたけど、それが実際にどう繋がっていくかは未知数だったし、お話もなんの話にするかは決まってなかったし、子どももいるし、みんなで山を感じて楽しめればいいかなって。その時みんなと初めて会ったってことも大きかったから……本当に何にも考えてなかったかな。(笑)

西上 リナさんはあの時、水に対して反応してましたよね。(『イノシシと月』創作ノート3−ぼーっとした時見えてくるもの−

RINAさん うん。西上くんにそう言われてそうだなあーって。その時に「水がある山」と「水がない山」のことを想像して、「水がない山」ってつまんないかなーって考えたりしました。山を歩いていて水辺に来た時に「あ!」ってなんだか嬉しさが込み上げる。

西上 あれなんでしょうね。みんな「なんで山行くのかなあ」って思ってるじゃないですか。しのっちみたいに最初から溶け込んでいる人もいましたけど、他の人は話しながら歩いてる。ここにヒントを得にきたワケだから、なんかやんなくちゃいけないのかな、みたいな。でもそれが水の近くで立ち止まって、で立ち止まると見えるものが一気に広がるというか、そこに水があったことって何かとっても意味があることなんじゃないかとボクは今考えていて、それは火を見つめることとも関係があるような気がするんです。この二つは「ぼーっ」と出来る。それと音楽も何か関係があるんじゃないかって。そんなことを漠然と考えてるんです。

RINAさん そういう「火を見ていたら自分たちのルーツに帰る精神状態になっていく」みたいなことって、例えばCDとかでも環境音楽とかあるじゃないですか。でも実際に生で聞く水の音ってやっぱり違うなあって。かと言ってトイレや食器洗いの時の水の音には癒されないし、多分生活音ではない。やっぱり森だったり、海だったりには何か違うものがあって、水の音や火の色は、自分たちをルーツに戻す何かがあるんでしょうね。でもそれが音楽とどう関わってくるんだろう。この間、「ユニゾンとハーモニーはどちらが先か」とか「子守唄と鼻歌はどっちが先か」とか話したじゃないですか。どちらが先かは分からないけど、昔の人は水や火ともっと密接に結びついていたと思うので、なんかそういうところから鼻歌とかハーモニーが生まれてきたのかも知れないですね。あと言葉とかも。言葉を音として捉えるなら。

子守唄の周波数

西上 昨日、そこの畦道を赤ちゃんを抱っこしたお母さんが歌いながら通りかかったんですよ。で、ボクと一瞬目が合ったんですけど、お母さんは歌うことを止めないでそのまま通り過ぎて行ったんですね。非常にリラックスした時間がそこにはあって、それはさっきの水とか火を前にしている時と似た状態なんです。本当にぼーっとした状態。音楽っていうと、これまでは出ている音の方に執着していたけど、本当はこの状態にこそ音楽の秘密があるような気がしてきたんです。
で、この「何にも考えてない状態」っていうのはつまり無心の状態だから、お坊さんとかが厳しい修行の果てに目指す悟りの境地ですよね。一流の宗教者が自分を徹底的に追い込んで、やっと自分の執着心から自由になれた状態のことを悟りと呼ぶのだとしたら、これって何だろうって思っちゃう。だってそんな難しい事をしなくても、水とか火があればそうなれるわけだから。そして赤ちゃんともなると、水や火がなくてもその状態になれる。リラックスしている時のお母さんもそう。だから最も自然な声で歌い始めることが出来る。その歌よりいい歌はないんじゃないかなとか、そういう事を思うんですよね。で、今日皿山でRINAさんが弾いてくれたバラフォンの響きやリナさんの歌声の中にもそれと同じようなものを感じたんです。

RINAさんによるバラフォンの演奏

演奏時の状態は?

西上 なので、その時のRINAさんは一体どんな状態にあったんだろうということは聞いてみたいですね。

RINAさん 私の中で、今日の1日の中で、あの皿山公園の流れというのは、一番リラックスしているいつもの自分の時に近いと思うんですよね。子ども達とも稽古を通して仲良くなってるし、これは稽古ではない。じゃあピクニックだ。私は別に演奏を見せるために行くわけじゃない。普段自分が楽しくバラフォンを叩いたり、「練習したいなあ」って思って叩く時って結構リラックスして、自分が「やりたい」と思った事をやる感じなんですよね。で、そんな中で友達とか一緒にいたりすると、お互い別々の事をするけど、私はバラフォンを叩く、向こうは違う事をするとか、そういう時も私は別にその人を意識して叩くわけじゃなくて、

西上 あ、全く別の事をするわけですね。

RINAさん うん。向こうは本を読むとか、ダンスの振りを練習するとか。そういう時って一人の練習の時ともまた違う。一人で練習する時は練習だから不快な音を出して練習することもある。でも人といる時はなるべく不快な音は出さないように気をつけながらっていうのはある。かと言ってそれで縛られてるわけじゃない。みんなが楽しそうにしてると私も幸せな気持ちになるし、それに合わせて美幸さんが踊ってたりとか、西上くんが寝始めたりとか、音楽を通して自分が幸せになれる時間かなって思いますね。パフォーマンスをしている時ももちろん幸せなんですけど、それともまた違うところで感じる幸せの時間。歌とかも私得意じゃないから、「じゃあ歌ってください!」とか言われると出来ないんですけど、まあ鼻歌に近いというか、バックミュージック的にずっと流れてる、それくらいの感じでいると自分も気持ちいいしっていうのもあるので、穏やかな幸せな時間って感じですかね。

西上 演奏してる方が幸せになっていく、演奏の中に幸せを感じる、ということは幸せって何なのか。何でしょうそこにある幸せは。

RINAさん なんでしょうねえ。自分一人が幸せな気持ちで叩いてたらいつでもそれが成り立つわけじゃないんだろうし……。

西上 例えば、部屋の中の窓を閉めてるような状態で演奏するのと、今日みたいに風が抜けて、景色が開けてて花びらが舞って、みたいな場所で演奏するときの違いはどうでしょう。

RINAさん やっぱ今日みたいな方が叩きやすいっていうか、楽しいですよね。自分が一番リラックスしやすい。で、人によって違うのかもしれないですけど、私の場合は昔から、誰かと一緒にいて、お互い違う事をしてるけど、一緒にいる時間を楽しんでるっていうのが好きなんですよ。小さい頃の記憶でいうと、自分は遊んでるけど母親はご飯を作ってる。その中でカタカタカタってご飯を作る音が聞こえるっていう、同じ空間にいるけど違う事をして、お互いが何か幸せを感じてるっていうような時間の使い方が好きで、もちろん共同作業も好きなんですけど、今日みたいなのはそういう時間であり空間だったんですよね。天気のこととかも感じられてさらに楽しかったんだと思うんです。それが今日を幸せにした。

溶けていく音楽

西上 今音楽というと、聞くとかノルとか踊るとかになっちゃうんですけど、そういう好きにしてていい、人同士だけじゃなくて自然との調和もある、そういう音楽の形があったとしたらいいなと思うんですけど、そういうのありますかね。

RINAさん 今日みたいなのって、みんな立場がフラットなんですよね。誰かがパフォーマーとか、誰かが見せるためにいるわけじゃないから成り立つのでかなって思って。この間稽古の時に言ってたけど、「俳優とお客さんは同じじゃいけない。話しちゃいけないってわけじゃないけど、話しかけられちゃいけない時はあって、それは自分たちでその空間を作り上げなければいけない」っていうことって、パフォーマンスの時には、そういう空気を操る要素があると思うから、相手を楽しませようと思ってる時点で多分そういう空気を操ろうとしてると思うんですよね。でも、今日みたいな空気を操らないっていうのって、

西上 自分が溶けていってるみたいな感じですよね。

RINAさん そうそうそう。でもなんか私そういうの好きで、昔コンテンポラリーダンスの作品に少しだけ参加したことがあって、「あなたがここにいたいっていうイメージはどんな感じ?」って聞かれて、「自分は風景になりたい」って言ったんです。「風景として色はそこにあるんだけど、でもぼやけてしまってて他のものにフォーカスが当たってる。そんなのがいいです。」って言った時に、それが理解してもらえなくて、今思うとその時ってこういう事を考えてたんだと思いました。

西上 それすごくいいですよね。そういう踊りがあるんだとしたら。

RINAさん バックミュージックもそうだと思うんですよね。もちろん自分が主張してみんなを楽しませるっていうのも一つのやり方で面白いんですけど、空気と調和してあるかないかわからないんだけどあるんだよ、影響し合ってるんだよっていうような、世界には何かそんなパフォーマンスがありそうですよね。

西上 ベイビーシアターなんかは、そういうことを目指してるんでしょうけど、やる方はやっぱりなんかやんなきゃって思っちゃうし、観る方もなんか観せてくれるんでしょ?って思っちゃう。でも実はそこに音楽家が一人いて、その音楽家が、その場にある空気の中に溶け込んでいくことができる人だとして、水があれば水の音の中に溶けていく音を奏で、山に風が吹けば風に入っていける音を出す。そこにお母さんが赤ちゃんを連れてきて、思い思いの時間を過ごし始める。そこにある種の調和が生まれた時、もう一人ダンサーがやってきて、その世界の中にダンサーは自分の体を使って溶け込んでいったら、赤ちゃんは一体何を始めるんだろう、みたいな。ベイビーシアターは、やっぱりそういうことを目指してるんでしょうね。

RINAさん 確かに。今言われてつながりました。
(sideBに続く)

RINAさんと創作中の『イノシシと月』(劇団さんぽ作品)は、2020年4月29日に初日を迎える予定でしたが、新型コロナウィルスの影響で4月13日に稽古を中断。現在、約一年の先送りが予想されています。この対談は、創作を一時断念せざるを得ない状況になった時に、そのまま稽古場を閉じるのはあまりに惜しく、作品について振り返ってみようと始めた『イノシシと月』創作ノートの番外編として行ったものです。
藤井家三兄弟とは、『イノシシと月』のプロデューサー藤井美幸さんの子どもたちのこと。

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