Softbank2017年 孫正義氏の基調講演を観て考えた事

今日は、演劇史考をお休みして、おススメ動画。Softbank孫正義さんの2017年基調講演を紹介します。

「そういうの興味ない。」という方もたくさんいらっしゃるでしょう。特に僕の周りの「子供が好き」「生の舞台が好き」「体験第一!」という方々は拒否反応を示すでしょう。でもそういう方々にこそ見ていただきたい動画なのです。
いま日本で最も勢いのある企業のトップが、この時代をどう捉えているかをうかがい知る事が出来ます。

  • 今は情報革命の時代。この産業革命以来の人間社会の大変革をSoftbankがどう捉えているか。
  • 人工知能は記憶・知識だけでなく知性を手に入れた。産業革命で必要とされた資源は石炭や鉄。情報革命の資源はデータ。
  • 人口70億の電話・ネット回線を取り合う時代は終わった。これからは人ではなく、すべてのモノに小さなコンピュータが内包される。全世界一兆個のモノがインターネットを通じてつながる「IoT」の時代の到来。
  • それらすべてのデータを人工知能が統合する。「超知性」の誕生。
  • 医療の世界、交通手段の世界、農業の世界、ありとあらゆる世界が再定義される。
  • それは良い悪いに関係なく必ずやって来る。

ハッキリ言って空恐ろしい内容です。これを思想家が語っているわけではなく、実業家が語っているから恐ろしいのです。基調講演の中では、すでにSoftbankがそれぞれの分野の企業を買収し、動き出している様子が紹介されています。運送ロボット、自動運転、衛星からの情報収集、医療ロボット…
僕たちが持っているスマートフォンの中に入っている半導体の99%はイギリスのARMという企業が作っているらしいのですが、SoftbankはARMも買収しました。ボクもスマートフォンを使っている以上、孫さんを敵視して悪口を言っても仕方ありません。せいぜい「Softbankとは契約しないようにして」と、抵抗するが関の山です。では、どうすべきか。AIの時代をどうやったら人として豊かに生きていけるのか。それは、みなさんそれぞれ考えていくしかありません。僕の場合は、図らずもそのヒントを孫さん自身からいただきました。
この講演は、孫さんのこんな言葉で始まります。

学生の頃思いました。松下幸之助さんは幸せだなあ。本田さんは森田さんは幸せだなあ。もし、自分があの時代に生まれてたら彼らと切磋琢磨して、エレクトロニクス、自動車の世界に打って出て挑戦したのに。うらやましく思いました。彼らが生まれた時代にうらやましいと思ったんですね。でも、いま思うのは、「よかったなあ。」と、こっちのほうがいい時代に生まれたなあ、と思うわけです。この時代に挑戦できることを本当に幸せだと思うわけです。

実は僕はこの冒頭から引っかかりました。「幸せという言葉の使い方が違うんじゃないか」と思うわけです。孫さんの言う幸せとは、きっと達成感や満足感の事なのではないかと。孫さんの考える幸せは、孫さん自身の中にある。自分と他者を分けた関係の中にある。僕は逆です。僕の場合は、自分という境界線が溶けた瞬間に幸せを感じます。それは、泣いた姪っ子が抱き着いてきた瞬間。気がついたら手をつないでいた時。ベイビードラマで赤ちゃんと目が合った時。芝居を観ていて、その人物の気持ちが自分の中に飛び込んでくる瞬間などです。普段頑なな自分という輪郭がぼやっと溶ける。幸せは、孫さんの言うようにエッジの効いたギラギラしたものではなく、もっと曖昧で、ぼんやりしていて、温かい入り江の中に、浮き輪もなしでプカプカ浮かんでいるような、そんな柔らかなものだと思うのです。幸せは個人の中には存在しえない。人と人の関係性の中にある。
僕は、どちらかというと自意識が高く、人に対して壁を作ってしまうタイプの人間です。それがなぜか、子供や赤ちゃんと接していると、その壁がすっと取り払われる事がある。あと芝居に関わっていると、びっくりするくらい透明な気持ちになる事がある。
僕は、この、人が生まれながらに持っている「つながる力」について考えていきたいと思っています。つながる力を誰よりも持った「子供たち」と、つながる芸術「演劇」で。……あれ? 自分から最も遠い存在だと思っていた孫さんのお話を聞いていたら、自分の目標がより明確になってきたぞ。不思議な事もあるもんだ。

というわけで、全国の児童演劇に関わる皆さん、子ども劇場・おやこ劇場の方々、そして子供たちの未来を憂えるすべての皆さんにこの動画をおススメします。
講演は、2時間12分と長いですけど、頭の20分でだいたい骨子はつかめますので、そこだけでも。
それにしても孫さんの意欲、好奇心、パワーは半端じゃない。そこは見習わないといけないなあ…

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